野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

老人ホームREMIXのための撮影

3月14日に、横浜の馬車道にあるBankART NYKのライブラリーで、老人ホーム・REMIX #1というコンサートをします。老人ホーム「さくら苑」のお年寄りの演奏する映像と、野村のピアノ演奏によるコンサートで、今回は、撮影に行く最終回。映像撮影は、上田謙太郎くんです。

3人の男性による即興太鼓のトリオ
3人の男性に、見学に来られたダンサーや俳優の女性3人が加わったセクステット
全員での即興

などがありました。途中に入るお年寄りの気のきいた一言が、笑いや味わいを増します。それと、お年寄りたちの演奏する姿は、どうしてこんなに絵になるのでしょう?ある意味、体力的な衰えもあるだけに、無駄な力や無駄な動作が自然に省かれてしまうのかもしれません。

3月の公演に向けての映像の編集は、2月半ばに行うことに。長大な一作品を作るのではなく、複数の切り口から、いくつもの短編映像を作り、様々な可能性を立体的に見せたい。その映像とピアノで共演していくことで、全く違ったピアノ音楽を、立体的に示すこともできるでは、と考えています。非常に面白い作品が作れそうです。

ところで、お年寄りの中でも、野村誠との活動歴の長い樋上さんは、「無我の境地」と言いました。集団即興で、「無我の境地」になるといいのだ、と。全くだと思った。ぼくも演奏している最中、最初は、演奏が映像になった時に、ピアノの音があんまり入っていると、後で映像編集する時に使いにくい、とか考えて、その時間にいない瞬間もありました。しかし、そういう演奏は、作為的でやはり本物ではない。これではいけないな、と思い、今この場での演奏を心底楽しもうと思ったのです。


この作品づくりも、野村誠のポストワークショップなのですが、ポストを意識しすぎては、何も楽しくなくなってしまいます。

もう一度、ポストワークショップの問いを、掲げてみましょう。

プロセスを重視し、少人数で参加する人の主体的な発見や気づきにウエイトを置くワークショップ型の活動は、安心して表現できるアットホームな場を保証する(しかし)ーーーー→閉じた場(しかし)ーーーーーー→アットホーム(しかし)ーーーーー→

アットホームと閉鎖的なことは、表裏一体なのです。そして、ぼくは、このアットホームな場自体を肯定し、そのアットホームな場で起こっている創造的な出来事を、その魅力を失わずに、外とリンクさせていく方法について、模索しているわけです。そのことを、ポストワークショップというキーワードで考えているのが、BankART Schoolでの8回講義なのです。

このアットホームを肯定する、ということが、すごく大切な気がしています。