野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

コペンハーゲン7日目

カールは魚が好き。魚屋さんが新鮮な魚を売りに来たので魚を買います。今日は水族館に行きました。そして、夜は魚を食べました。

そして、1週間滞在の最後のセミナー。ぼくは、この1週間を総括しました。

まず

1 作曲の3要素
・いろんな場面(elements)
・いろんな構成(structures)
・いろんな変わり方(transitions)
まず、カールの作曲を、以上の3つの要素に分けて考えてみました。つまり、色々な場面を用意する(例えば、汚い音のセクションとか、会話の断片的な場面とか、アドリブとか、休止とか・・・)、そして、そうした場面を組み立てて構成を作る、そして、それぞれの場面から場面にどうやって変わるか(一気に変わる、徐々に変わる、合図で変わる、なんとなく変わる・・・・)、この3つを決めていくのがカールの作曲。

2 即興における人間関係

カールのもう一つのアプローチに、即興における人間関係を記述することで作曲にするのがあります。これは、例えば、真似をするとか、対照的なことをするとか、コール&レスポンスとか、カノンとか、ソロ(目立つ)とか、・・・・

3 作曲家と演奏家の関係

さて、ところが、カールが昨日書いてきた提案に、「しょうぎ作曲」の改訂版で、それぞれの人が、自分以外の人のための作曲をする、というのがありました。これまでのカールの作曲は、演奏家同士の関係性についての記述は色々ありますが、作曲家と演奏家の関係性としては、やはり、作曲家→演奏家という一方向性のベクトルはあって、演奏家から作曲家にフィードバックしてくるところは、あまり感じませんでした。

しょうぎ作曲の場合は、作曲者と演奏者が同じなので、作曲者と演奏者の間では、相互作用、フィードバックが見られます。さらに、カールが提案した改訂版のしょうぎ作曲でも、演奏家と作曲家の関係が、複雑になってきています。

それで、この1週間の結論として、今後、カールと共同作曲をしていくにあたって、
演奏家からのフィードバックを作曲のプロセスに盛り込んでいくことを、大きく掲げました。また、図形楽譜は、一部の音楽家のみならず、多くの人に開かれた形式であるにも関わらず、カールの作品の多くは、現代音楽の分野の人が主に演奏していて、その演奏の解釈も現代音楽風になりがちですが、
もっと、現代音楽の文脈から無縁な様々な人が演奏するチャンスを作っていくことも、今後の指針として掲げました。

カールは作曲家として、音楽療法家として、また、特殊学級の子どもとワークショップをしたり、即興演奏家として、など、色々な形で音楽を追求している音楽家だと思います。しかし、やはり、現代音楽の演奏家にも、子どもにも、色んな境界をグチャグチャにしているぼくの仕事に可能性を感じているようで、ぼくらは、これからその方向に何かをしていこうと、最後のセミナーを締めくくりました。

だから、これからカールと新しい作品づくりをしていきます。それを、日本でもワークショップなどの現場で実践しつつフィードバックしていくことになるでしょう。

ということで、コペンハーゲンにはまた来たいです。

明日からベルリンです。