野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

あなざーわーくす公演

エイブルアート・オンステージの第3期参加6団体の6つ目の公演、あなざーわーくすの公演を見に行きました。わたなべなおこさんの演出舞台を見るのも初めてです。

前半3分の1は非常に楽しく面白く見ました。その後、ちょっと体調がすぐれなかったせいもあってか、後半はやや注意も散漫になって、やや退屈しました。で、どういうことなのかを、少し自己分析してみます。

出演者は、あなざーわーくすの俳優3人+ワークショップ参加者3人+ゲスト俳優2人+ゲストミュージシャン2人+観客約50人という感じでした。公演全体を通して、10人の出演者は数多くのワークショップを重ねただけあって、信頼関係も築けていて、無理矢理一緒に舞台をやっているような違和感は全然なく自然です。逆に言うと、みんなのテイストが歩調を合わせ過ぎて、それが魅力を半減させているように感じました。

基本的に全体のテイストは、あなざー俳優の3人のトーンで作られます。そして、これが基本的にこれまでの「あなざーわーくす」の作品のテイストなのだと思います。

それに対して、今回の舞台は、あなざーわーくすと違ったテイストの要素、ワークショップ参加者やゲスト俳優やミュージシャンの存在を入れたところが新たな試みです。この人たちの存在が、あなざーわーくすテイストではない対位法的な存在であると、あなざーわーくすの特長も、その人たちの特長も、双方が際立つようです。そういう瞬間もいくつかありました。

ワークショップ参加者の3人は、ゆったりした間を持っていて、呼吸感がありました。あなざーわーくすの3人の俳優は、逆にあまり間をあけずにテンション高く台詞を言って、呼吸を少なくたたみかけていく感じなので、好対照でした。ゆっくり喋るお兄さんの言葉は、今日ゆっくり喋る俳優が他にいなかったためか、誰の言葉よりも観客の耳に飛び込んできました。また、ワークショップ参加者のいっぱいツッコミを入れる女の子は、インタビューする時、独特の間を持って質問を繰り出します。もう一人のワークショップ参加者のお兄さんのトーンチャイムの演奏は、本当に間を味わっている演奏で、大変良かった。

今日の会場は狭い空間だったので、会場の酸素が薄かったのか、ぼくは途中で立ちくらみになりました。芝居がアップテンポで次々に語られるので、観客としては、呼吸が浅くなり、息継ぐ間がとりにくくなります。だから、時々入る3人のワークショップ参加者のゆったりした間が、観客に深呼吸するポイントを作ってくれていました。空気が薄かったせいで、呼吸のことを意識させられました。

ゲスト俳優の2人は、あなざーわーくすのテイストと異質である方が、ぼくは好きかもしれません。多分、二人は意識的にか無意識的にか、あなざーテイストに寄り添った演技をしていましたが、例えば、ポかりん記憶舎のテイストのままのメーテルとして現れた方が、空間がゆがんで新鮮な感じがして、ぼく好みかもしれません。

ゲスト音楽家について。今日の公演は、美術が全体を通して、バルーンアートというテイストで統一されていました。音楽も統一感があった方が、見やすかったかも。ピアノ、カリンバジャンベ、鍵盤ハーモニカ、カズー、トライアングル、ハープ、・・・・など、色んな楽器が出てきましたが、楽器を1種類とかに限定し、例えば、全部の曲に風船の音が入っているとか・・・。

と、今日の舞台は、「統一」と「不統一」について、いろいろ考えさせられるものでした。
皆さん、おつかれさまでした。明日の公演の成功をお祈りします。