野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

紙コップが宝物になる瞬間

今日は、3月28日放送のあいのて特別番組のMAでした。NHKに来てする「あいのて」関係の仕事は、今日で最後です。3月28日の特別番組は再放送の予定はありません。午前10時〜10時半の30分番組です。皆さん、お見逃しなく。できれば、ビデオにとりましょう。

番組は、3月21日のイベントの公開録画を編集しているのですが、主に2回目の公演を使っていました。1回目のイベントは、観客のノリが良すぎて、テレビでいきなり見たら、あまりにもノリが良くてついていけないのではないか、というのも理由の一つらしいです。

この番組、必見です。ほとんど言葉による説明がないまま、言葉を必要にしない人々が音を出して、にやついたり、驚いたり、こわがったり、喜んだり、はしゃいだり、しています。

あと、紙コップが宝物になる瞬間が映っています。紙コップやペットボトルは、飲み物を飲んだら、もう用なしで捨てられてしまうものです。そして、物に溢れる現代の日本で、コンピュータのゲームでも、テクノロジーを駆使した玩具でもなく、ただの紙コップなのに、子どもたちが宝物として扱っているのです。

平盛小学校の子どもたちも、ただの悪ガキだ、と思って見たら、ただの悪ガキ以上の何にも見えないけれど、ワニバレエを生み出した天才だと思ってみたら、やつらが本当に可能性をいっぱい持った天才たちに見えてきます。紙コップだって、ただのゴミと思った瞬間にゴミ以上の何にもならないのに、宝物だと思ったら、紙コップから無限の宇宙が生み出せるんだと思いました。少なくとも、紙コップを演奏している子どもたちそれぞれが、それぞれの宇宙を体験しているように、ぼくは感じました。紙コップは宝物です。

それにしても、素敵な奇跡的な番組「あいのて」に1年間関われたこと、そして、最後に30分の特番が作れたこと、これは、本当にやってよかったと思います。紙コップが宝物になるんだもの。

音声の赤木さんともうお会いできないのが、うそのようです。1年間、素晴らしいお仕事でした。映像のスイッチングをされていた塩谷さんも、MAルームに顔を出してくれました。そして、塩谷さんが来られるときに限って、片岡さんがカメラ割りの段取り通りには会場から木琴に戻って来なかった場面が映っているのです。そこを演奏している時は、塩谷さんがぼやいてるだろうなあ、でも、ライブ会場の雰囲気を見ると、このまま突撃かなあ、と思いながら、やっていました。それにしても福岡では、塩谷さんがそばにいてくれて、本当に心強かったです。そして、ディレクターの高橋さん、プロデューサーの工藤さんとあいのてさんで、食事に行きました。本当に、いい番組が一緒に作れてよかったです。高橋さん曰く「野村さんは、空気を音にしている」そうです。なるほど。音楽の基本は、「音を聴く」のではなく、「空気を聴く」のかもしれないなぁ。