野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

TOKYOSCAPE SHOWCASE

クリスマスイブは、彼女とお食事後、演劇を見に行こう!

アトリエ劇研でのTOKYOSCAPE SHOWCASEを見に行った。30分程度の作品が3作品見られるので、ライブハウスにライブを見に行って、色んなバンドが見られるお得感もあって、演劇通じゃないから勉強しよっと思って見に行った。

とは言え、一昨日に歌舞伎を堪能し、昨日は山下残のあまりにもリアルで生々しい生きた時間の舞台を見てしまったぼくは、物足りなく思うんじゃないか、と少し不安を感じながら行った。

まず、明神慈さんの作・演出による「二十三夜」を見た。役者の呼吸感、間の取り方などがとても良く、このフィクションの世界に一気に引きずり込まれた。台本の設定も良いので、明らかなるフィクションで、現実にはない状況を設定していて、でも、そのフィクションはぼくらが生きているリアルに通じるものがある。だからこそ、このフィクションに人は引きつけられるのだろう、と思った。タイトルの「二十三夜」というタイトルが、もう少し別のタイトルになってもいいのでは、と思った。とは言え、今日見た3作品の中で、一番気に入った。

続いて、内藤達也さん作・演出の「Endless Ribbon」。これも、状況の設定と役者の演技(特に呼吸感や間)が良かったので、非常に面白く見た。登場人物のほとんどが、極端な物忘れで、さっき言ったことを忘れるので、何度も同じ行為をループしていまう、という状況がうまく構成されていて、そこから様々な気分を喚起させられる。で、この後、どうやって終わるのだろう?と楽しみにして見ていたが、そこからの終わらせ方が、ちょっと無理に終わらせちゃった感じで残念だった。これまた、「Endless Ribbon」というタイトルは、もう一考する余地があると思った。

最後の詩森ろばさん作・演出の「サイケデリック・フルーツ・パフェ・ミニ」は、前の2作品とは違って、実在の人物、フリージャズ奏者阿部薫と作家鈴木いずみという夫婦を題材にしている。途中の台詞の中にも、ニーチェニジンスキーなど実在の人物が出てきた。そして、バックに流れる音も、実在した阿部薫の音源と思われる。そうした時に、演じている役者の叫びよりも、ぼくには録音から聴こえるサックスの魂の音の方が、圧倒的にリアルに突きつけてくる感覚を持った。歴史に取り組むことの難しさを感じちゃいました。他の二人の作品は、自分の興味からテーマを選んでいて、フィクションであるがゆえ、自分なりの世界観を作っていくことができるけれども、歴史に取り組む場合、作・演出である詩森さんは、そこでどんな世界をつくるために、この歴史を題材として選ぶのか、という部分が、多分、まだまだ消化の途中なのでしょう。見ていて、不満が残った。

てなわけで、演劇を色々見れて良かった。

ここまで来たら、明日は、山口に行って、向井山朋子さんのコンサートを聴きに行ってしまいましょう!12月に仕事を入れなかったおかげで、本当に色んなものを見に行けて幸せ。