野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

はだかのおじさん

砧南中学校での3回目のセッション。11月23日にハダスフィールド現代音楽祭で演奏される新曲を、日本の中学校とイギリスの中学校の共同プロジェクトとして創作中。
さて、イギリスの中学校での2回目のセッションの録音を日本の中学生と聴く。まずは、「はだかのおじさん」。前回送った日本語の録音の中から、「はだかのおじさん」というフレーズをイギリスの中学生が選んでループさせ、それに合わせて楽器を付け加えた。これには、中学生たちも大爆笑。
続いて、「なぞい」の改訂版を聴く。前半の手拍子の部分、途中のトリルが色々な楽器ででてくる部分、途中のリズミカルな部分、最後の和音、それぞれについて各自で意見を書いてもらった。また、「みずい」の改訂版も聴いてもらう。E,F,G,G#の4音を使った音階の雰囲気はこれでいいか?「みずみずしい」ものとして、ラヴェンダー、水、空気、風を歌詞にしているがこれでいいか、などを質問。あと、曲は、「はだかのおじさん」、「なぞい」、「むずい」、「みずい」、「匂いの衝撃」の5場面からなるが、どれで始まったらいいか、どれで終わったらいいかを各自紙に書き出してもらった。
集めた紙を読んでみると、結構よく考えられた意見が多かった。「なぞい」なのだから、もっと「なぞ」にするために、手拍子のリズムをもっと不規則にするとか、もっと変な音色を加えろ、「みずい」で低音はいらない、などなど。こうした要望を総合して、ぼくがさらに英語に翻訳しつつ、音楽擁護にも翻訳する。「1オクターブ高くして」とか、「このスケールのうち、1音か2音だけ音を変える」などなど。これをイギリスにメールで送る。この指示を受けて、イギリスでも続きをするはず。さて、どんな風に発展するか、楽しみ。

夜は、横浜みなとみらいホールにコンサートを見に行く。「Just Composed in Yokohama 2005」というコンサート。リコーダーの鈴木俊哉さんが中心になった演奏会。とにかく、1曲目の俊哉さんのシャリーノの演奏が素晴らしかった(テナーリコーダー独奏)。あとは、途中でマショー(14世紀の大作曲家)の「私の終わりは私の始まり」のリコーダー+アコーディオンの演奏も良かった。これは、大昔P−ブロッでも演奏したことがある曲で、ぼくは大好き。その他、原田敬子さんの作品や、今堀拓也さんの新作などあったが、あまり印象に残らず。今堀作品など音がいっぱい書いてあるけど、あの作品のうち80%の音を消しゴムで消してしまったらどんな曲になるのだろう?とふと思った。演奏する方も楽になるし、聴くほうももっとフォーカスできるかなぁ、と思った。動物園の動物の呼吸感で作曲すると、どんなんかなぁ、などと思った。

コンサート会場で長倉さん(ズーラシア、飼育係)と、中野さん(東京音大、ピアノ)と会い、一緒にお茶することに。でも、その前に楽屋の鈴木俊哉さんに声をかけようと楽屋を目指す。原田敬子さんに長倉かすみさんを紹介。「私、動物園大好きなんですよ。」と原田さん。楽屋で、このコンサートの委嘱作曲家の選定委員だった西村朗さん(作曲家)に、「アーティスト・イン・レジデンス」って何やってるの?と尋ねられた。ぼくが、みなとみらいで弦楽四重奏を作るワークショップをしていることを、この人は知っているらしい。そこで、動物園の話などをしてみたけど、そこから会話は弾まず。帰り際に鈴木俊哉さんから動物園のことも知ってますし、・・・と声をかけてもらってホールを後にする。鈴木俊哉さんと初めてお会いしたときは、武生の中学校だった。宮田まゆみさん(笙)とのデュオで、リコーダーに馴染みのある中学生が、細川俊夫作品にゲラゲラ笑っていたのが印象的。リコーダーって、小中学生に馴染みのある音楽だし、弦楽四重奏の次はリコーダーの作品を作るワークショップをしても面白いだろうなぁ、と思った。

その後、長倉さんと中野さんと素敵なカフェでお茶をして、くつろいでおしゃべり。かなり楽しく和んだ。中野さんは、東京音大で伊左治直さんのソルフェージュの授業の受講者だった人で、この授業にゲストで行ったときに知り合い、伊左治くんが試験曲として「たまごをもって家出する」を弾きなさいと半分冗談で言ったら、本気にして試験で弾いてしまった人。その試験は、4人の作曲の学生が「しょうぎ作曲」の曲を発表したり、別の学生は武満を演奏、別の学生は伊左治作品の演奏、そこに倍音Sの岡山君と尾引さんが演奏したり、加奈ちゃんが空手をやったり、試験というより、ライブだった。懐かしく思い出す。3年前のことだ。