野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

P−ブロッ雑音楽の世界

世田谷美術館でのコンサート。「P−ブロッ雑音楽の世界」

雑をテーマにしていると、どこをどういう風に雑にするかを意識する。意味のある雑と意味をなさない雑。

雑多な曲をと取り上げた第1部の中で平石博一作曲の「Up To Date ?」と「守ってあげたい」が久しぶりに演奏して新鮮だった。特に平石さんの曲は、雑に演奏する曲ではなく、かなり一音一音丁寧に正確に演奏しないと成立しない曲で、それを小さな音で確実に丁寧に演奏を楽しめたので、随分P−ブロッも成長したなぁ、と演奏しながら感じた。演奏中に曲に合わせて踊っている子どもがいて面白かった。

第2部の雑談と雑曲だが、会場が響き過ぎるので、しっかりはっきり話さないと会話が成立しないので、雑談しにくい場所。だから、うまく雑談が成立しない。変に雑談がうまく展開したりせずに、思惑通りに進まないのが、ちょうど、次の鈴木潤さんの喋っているように演奏する「P−ブロッメンバー紹介」の導入のように思えて、不思議。ここは良い流れだと思った。

鈴木潤さんの曲を観客の前で初めてやって、どういう反応が来るかやってみるまで分からなくって、そっか、ここでうけるんだ、とか、こんな感じになるんだ、と演奏。この曲、やってみて良かった。続いて、ぼくの「雑曲集」は10曲。野村誠の場合、こういう風に書けばこんな音になるだろう、とかなりイメージできているところがあって、その通りになっている曲は、それなりに面白いけど、作曲者が想像できていないような音になっている曲が驚きがあっていいと思った。3曲目の指づかいだけ決まっている曲が、一番作曲者が想像できなかったサウンドになっていたと思うので、これがまた聞きたいかな。でも、こうやって、10個くらいアイディアを試せるのはいいと思うので、もっとこういう曲を書いたらいいと思うし、もっと想像のつかないものを書いてもいいのかな、と思った。林加奈の「ザ☆曲」の声で叫ぶ部分が、もっとやる気のない声でやった方が好みかな。やっていると、みんな妙に頑張っちゃうのね。しばさんのハイドン、吉森くんの「壁のむこう」は、演奏していて、集中力と体力を消費して疲れました。聞いている人は、リラックスして聞いてくれたらいいな。

とにかく、すごく響き会場だったので、演奏は大変だった。鍵ハモという楽器、芯になる音色が弱いので、響きのある空間では、音の輪郭が本当にぼやけやすく、表現が伝わりにくい。そういう場所で、力み過ぎずに、表現する、ということは、P−ブロッの課題の一つだったので、今回はそれなりに、この課題を解消できたかな、と思った。

それから、こういう響く場所に来ると、雑な部分が響きに包まれて溶け合って、目立たなくなるので、雑な感じがしなくなっていた。この場所で、ちゃんと雑が表現できるようにすることも課題。

ぼくにとって、P−ブロッをやることは、相変わらず楽しい。今回も2回のリハーサルで本番を迎え、各自が新曲を書いた。ちょっと大変だけど、少ない練習でも、どんどん新しい企画に取り組んで、本番をやっていきたい。結成して9年になるP−ブロッ、結成当初にあった雑なエネルギーを思い出しつつ、ここまで成長した演奏力を伸ばしつつ、これからどこへ進んでいくのか。もっともっと、P−ブロッの背中を押したいと思う。

まだまだ、楽しみ。

犬のためのコンサートは、雨のため犬も来なかった。次回のチャンスに。