野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

名古屋音大で「音楽と人生」

名古屋音大で「音楽と人生1」という講義を担当。100人強の学生を対象。名古屋音大の卒業生であるピアニスト佐藤信子さんに「たまごをもって家出する」を演奏してもらった。以前、佐藤さんの演奏を聴いたことがあるが、全く違う演奏で、全く違う曲のように聞こえた。でも、もちろん、楽譜通りに演奏しているのだけど、ニュアンス・解釈が全く違うと全然別の曲のように聞こえた。佐藤さんは、今日は自分の人生を考えながら弾いたのだそうで、そう思って弾いたら、弾き損ないも弾き損ないではなく、一つの事実として受け入れられたらしい。とにかく、全体を構成しない演奏で、譜面通りの音符を弾いているけど、非常に即興的な演奏だった。
その後、たまたま昌さんに感想を聞かれた学生の一人が、「曲の終わりの方で、なぜか涙が出てきそうになって」と言ってるうちに、その場で涙を流し始めてしまった。あとで聞いたら、彼女は音楽療法専攻の3年生。でも、なんで泣けてきたのか、よく分からないって言ってたそうだ。佐藤さんによると、ドイツで演奏した時も、泣いてる人がいたそうで、この涙は国籍には無関係な何からしい。
そんな演奏を聴いた後に、昌さんとの即興演奏コーナーになった。ところが、演奏に聞き惚れた後で、とても即興演奏なんてする気分にもなれないけど、でも、その気分から即興を始めようと思った。できるだけ、飾らない音を出したいと、もがきながら演奏した。あの曲の後に演奏して蛇足にならないようにするのは、非常に難しい。だって、曲で言い切っている部分が大きいから。でも、この即興はいい経験だった。実際、聴いている人には、どう聞こえたのだろう?録音でチェックしてみたい。
その後、名古屋音大の卒業生のケンハモ3台同時演奏する人、作曲の学生、ピアノの学生(彼女は向井山さんの演奏で「たまご」を聴いたことがあった)、音楽療法の学生、浜松からやってきたエレクトーン技術者の人、東京からやってきた音楽教室講師、といったメンバーとお菓子を囲んで、2時間ほど歓談。
家に帰ってからは、オルガン組曲の1曲目の譜面を書いていて、気がついたら朝になっていた。