野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

あなたとわたしの間に 後編


昨日に続いて、上田假奈代さんとのライブ。今日は、昨日の続きということで、敢えて、全て昨日と同じ服を着ていくことに決意する。

本番が始まって、上田假奈代は昨日のことを話した。昨日の続きがやりたい、という彼女の気持ちを語った。その点で、二人は同じ方向を向いていた。

昨日までのあらすじを語っているうちに、ぼくはピアノを弾き始め、そのまま「うた」という詩の朗読になった。昨日読んだ時と比べものにならないくらい、言葉にイメージがあり、耳から飛び込んでくる。そして、この詩を読んでいるうちに、いつの間にか上田假奈代は、詩の説明をしていた。

ぼくは途中でピアノを弾く手を止め、上田假奈代に問いかけ、テキストを奪い、上田假奈代はぼくからテキストを取り返そうとするが、ぼくは離さず、朗読を開始した。左手でマイクを持って詩を読みながら、右手でピアノを弾いた。

気がつくと上田假奈代は、ぼくの坐っているピアノ椅子に座って、ピアノを弾きながら言葉を発していた。ピアノから戻った上田假奈代は、自分の育った坂道の話をしていた。ぼくは、昔、上田假奈代の実家の坂道を通ったことがあるので、その風景が頭にうかんだ。おぬし、という名の犬がいた。

ぼくはピアノを激しく弾いていた。言葉は耳から飛び込んでいく。生きることは作業だ、と上田假奈代が語っている。言葉は態度だ。野村くんは、存在自体が態度だ、と語っている。ぼくは、ピアノを弾き続け、最後になって、鍵盤から手を離し、上田假奈代の言葉を待った。言葉が舞った。朗読が終わる。

それから、最後に上田假奈代は観客と一緒に踊りたい、と言った。ぼくは伴奏、上田假奈代は言葉で、振付けた。言葉は踊りになった。言葉が舞った。

本番中、スタッフの飯島さんは泣いた、と言っていた。
陶芸家の米田文ちゃんも泣いた、と言っていた。

上田假奈代は作業を続けていく、と言う。
ぼくは態度であり続けていく

態度、態度、態度
態度、態度、態度
態度、態度、態度

あなたとわたしの間に