野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

審査員

今日は、明治安田生命の会議室で、エイブルアート・オンステージの助成金の審査委員会があった。障害のある人の舞台芸術活動に対するプロジェクト立ち上げの助成金です。審査員なんかをぼくがするなんて、と思うけど、そんなことしちゃいました。
委員は、
 ・永井多恵子さん(世田谷パブリックシアター館長) 
 ・木佐貫邦子さん(舞踊家、K・身体表現教室主宰)
 ・平田オリザさん(劇作家、青年団主宰、桜美林大学助教授)
 ・野村誠(作曲家)
 ・吉野さつきさん(ワークショップ・コーディネーター、アートマネージャー)
 ・山本芳夫さん(明治安田生命専務取締役)
 ・播磨靖夫さん(エイブル・アート・ジャパン常務理事)
でした。木佐貫さん以外、全員出席。
 審査で選ばれた団体が公演をして、その公演から選ばれた団体が、来年8月にはフェスティバルみたいな形で東京公演をするのですが、これをメッチャ面白いものにしたい。だから、審査にあたっては、かなり真剣に議論をし、ただ選ぶだけではなく、選んだ団体がどうすれば現状よりももっと可能性が広がるか、ということを真剣に議論しました。
 審査する側から、もっとこんな風にやるといいのでは、とか、思いっきり注文をつけたり、アイディアを出したり、できるだけメッセージをつけてみました。単なる審査員ではつまらない。どうせだったら、一緒に時代を作っていくつもりで頑張りたい、と思いました。
 それにしても応募する人は、もっと審査員を驚かしたり、楽しませたりするつもりがあってもいいと思った。みんな審査員に気に入ってもらおうとし過ぎだ。
 かつて、プ−フ−というバンドでソニーのオーディションの関西地区予選の時、「こんなにたくさん聞いて審査員も疲れるだろうし、もっと聞きたいなら決勝で聞けばいい」と考えて、10分の持ち時間があるのに、4分しか演奏しなかったことがある。そうしたら、案の定、決勝にノミネートされた。
 決勝では、プログラムには2曲しか載っていないし、メンバーも4人しか載っていないのに、1曲目にプログラムに載っていない指揮者つきの即興演奏をやった。レコード会社のオーディションでレコードになりにくい即興の音楽を敢えて1曲目に入れて、審査員を試してみた。こんなのCDにできますか、あなた達は?かなりの悪戯気分でやった。
 ところが、この時、審査委員長だった三枝成彰さんは、「あの指揮がすごい面白かった」と言って、しかも、ぼくらは満票でグランプリになり、CDデビューが決まった。三枝さんは、すぐにNHKなどのテレビ番組に出したいと申し出てきて、番組の収録になった。「あの指揮をNHKでやってみたかったんだよなあ。」と三枝さん。
 ぼくは、三枝さんは、面白くない作曲家だなあ、と思っていて、こんな審査員に自分達の音楽が分かるのかな、と考えた上で応募して、この審査員たちに音楽の可能性を教えてやるんだ、という挑戦的、生意気な意気込みでオーディションに出した。
 もっと、挑戦的でいいのではないか、と思った。