野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

新年度のはじまり

昨日いっぱい働いたので、今日は働かずにのんびりと過ごす。庭の植物たちは、ここのところ加速度的に成長をしている。抜いても抜いても雑草が元気だ。山々は霞んでいる。花粉が多いのか、PM2.5なのか、それともただの春霞なのか。花粉のせいなのか、鼻水がひどい。ついに花粉症デビューなのか。洗濯物を外で干すと気持ちいいけど、花粉まみれの寝室を作っているような気にもなり悩ましい。

 

昨日のミュシャミュシャモシャモシャミュージックのこと、熊本市現代美術館のことなどを思い出しながら、これから熊本という土地をどう耕し、何が育っていくのだろう?と想像する。と同時に、せっかく九州に住んでいて韓国が近いので、今年度からは韓国に行こうかな、と思う。特に何かプロジェクトがあるわけではないので、韓国に友達を作りにいき、熊本と韓国で何かプロジェクトがやるためのパートナーが見つかったらいい。熊本市現代美術館で上映していた山内光枝作品での釜山の風景が、そういう気持ちの背中を押してくれた気がする。

 

夜は星空。満月も過ぎて下弦の月の時期になるので、月がいない夜空はちょっと前の満月が輝いていた夜空よりも星が見やすい。木星も冬の星座も、ずいぶん西に寄ってきて、獅子座や乙女座など春の星座が東側の空を賑やかせているし、北の空も、北斗七星が高くまであがってきた。

 

2023年度が終わり、2024年度が始まったようで、SNS上で新しい仕事や役職に就いた人が報告をしていて、ワクワク感が伝染してワクワクする。みなさん、ご活躍を!

 

 

ミュシャミュシャモシャモシャミュージック/香港の高校生との2回目

本日は、熊本市現代美術館アートラボマーケットで4時間に渡って、『ミュシャミュシャ・モシャモシャ・ミュージック』を開催した。

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熊本市現代美術館には、ミュージアムショップとカフェが併設されていたのだが、そのカフェは営業をやめてしまい、元カフェだったスペースを、アートラボマーケットという名称で活用することになり、今年度から里村真理さんが担当をしている。ここは一体、何?

 

この美術館には、展示室もあり、ワークショップルームもあり、図書スペースもあり、キッズルームもあり、ショップもある。そこに生じた空きスペース、アートラボマーケットは、その何でもない新たな実験の場としての可能性を探っている。

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人類学者のジョシュア、ダンサーのワタクミさん、作曲家の稲森さん、プロデューサーの坂口さん、美術家の宮本さんなど、熊本在住の方々と再会/交流できて、そういう出会いの場が色々な人に開かれていること自体に可能性を感じた。ここは、本来カフェだったのだが、カフェという名前のイベントを開催しても良いのだ、と思った。

 

一方、このスペースに人工芝を敷き詰め、楽器をいっぱい持ち込んだところ、楽器の音色に惹かれてか、親子で参加される方が非常に多かったことも印象的。ワークショップは、里村さんとアシスタントの穴瀬さんが応対してくれ、その時々の参加者のノリで、自然発生的な即興セッションがうねり、かなり面白い瞬間が何度も現れる。特に、このスペースは窓が大きく天井も高いため開放的な雰囲気で、ダンサーとともに伸び上がった時に、非常に気持ちよく感じ、この場所は体を動かすことにも向いていると思った。

 

即興セッションで新奏法が色々発見されたが、ブームワッカーの新奏法が面白い。ぼくは、もともとはブームワッカーの音色にあまり魅力を感じていなかったのだが、最近、考えを変えてきて、自分でも購入した。

 

ミュシャの同じ絵を同時に数人で模写するのが面白かった。今回の模写のルールは、ミュシャの絵のうち5本だけ線を選んで模写をしてもらった。だから、同じ絵なのに、人によって違うところに着眼する。そして、その結果、具象の絵画から抽象的な図像ができあがる。その図像を楽譜として解釈する。自分の模写した絵を演奏するよりも、他人が模写した絵を演奏した方が面白い。今回集まった楽譜を使って、それを発展させる次なるワークショップもやりたいな。

 

野村誠をカフェマスターとするカフェやりたいなぁ。来た人と喋り込んだり、時に演奏したり、のんびりしたりする空間。あっという間の4時間半(最後、盛り上がりすぎて、30分延長してしまう)。

 

4時間ワークショップしたのに、22時から香港の高校生とのオンラインワークショップ2回目。高校生たちが、古箏、柳琴、ピアノ、ボーカルなどについて発表してくれた後、ぼくも作曲について発表して、その後、音階の話とかリズムの話とかレクチャーして、オリジナルな音階を作ってもらったり、リズムを作ってもらった。宿題も出した。

 

 

 

 

サヌカイトと声とピアノ/ミュシャモシャの準備/香港の準備

高松市美術館の開館の音楽の音源を作っている。ワークショップで演奏してもらったサヌカイトの音源を繋ぎ合わせ、そこに、ワークショップで語ってもらった声を重ね、そこにピアノを重ねる。ワークショップのサヌカイトの揺らぐリズムを整えてしまっては、ワークショップで音源をとった意味がないので、それを活かしつつ、その揺らぎを覚えてピアノで合奏する。ここは少し遅め、ここは少し速くなる、などの微妙な間合いを覚えていく。そうやりながらピアノパートを確定させて、今日は練習。週明けに録音して重ねよう。

 

明日は、熊本市現代美術館で『ミュシャミュシャ・モシャモシャ・ミュージック』ワークショップをするので、楽器を色々準備する。琵琶も持って行きたいし、大正琴も、トイピアノもと、、、準備する。

 

あと、明日の夜には、香港の高校生たちとのオンラインワークショップの2回目があるので、それに向けてパワポを準備中。

 

 

ミュシャミュシャモシャモシャ/開館の音楽/ミヨー見まね

3月31日の日曜日は、熊本市現代美術館でワークショップというか、野村誠という広場が出現するのをやりたい。出入り自由なので、好きなときにどうぞ。

 

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高松市美術館の開館・閉館の音楽をつくっているが、現在取り組んでいるのは、

 

おはようございます。ただいまから開館いたします。どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。

 

というもので、これを結構、色々な人の声で録音した音があり、さらには、全員で言ったものなどもある。「ごゆっくり!」とノリノリで楽しそうに言っているのもあり、これらをどのように配置するかが、作曲のメインだったりする。サヌカイトは、一人ずつ順番に叩いたのが、規則的だけれども、少し揺らぎがあって面白いので、これに合わせてピアノを入れることにして作曲中。とてもシンプルなものになりそうである。

 

Darius Milhaud『Notes without music』読了。作曲家ミヨーの自伝の英訳。いつか『ミヨー見まね』という「だじゃれ音楽」をやりたいと思っているが、まだやっていない。今回、読みながらミヨーをいっぱい聴いたので、少し詳しくなった。以前、たまたま駒場アゴラ劇場の近くの古本屋で安くで売っていたので買った本。

 

第1次世界大戦の時はブラジル行き、第2次世界大戦の時はアメリカに行くし、ポール・クローデルジャン・コクトーなどとの交流の話など話題が色々面白い。ヒンデミットがアマチュア向けの現代音楽について関心があると、いうようなくだりが何度も出てきて、そういう作品を頼まれて書いたりもする。

 

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仲の良い夫婦のようで、マデレーヌ・ミヨーの話は頻繁に出てくるので、ウィキペディアで調べたら、2008年(105歳)まで生きておられて、びっくり。彼女に献呈するために、こっそり弦楽四重奏を書いた話とかも出てくる。そして、ベートーヴェンよりも多く弦楽四重奏を書くと決めて、18曲書いた。多作。 弦楽四重奏の第14番と第15番は、同時演奏もできて弦楽八重奏になるそう。

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肥後琵琶の多様性とカオス/サヌカイト

琵琶を習い始め、本日が2回目の稽古である。肥後琵琶という熊本に伝承されてきた琵琶がある。

 

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お稽古と言っても、肥後琵琶には筑前琵琶などのようには、教えるメソッドもないそうで、岩下小太郎さんからは、まず筑前琵琶を学んでから肥後琵琶をやるのが良いのではとアドバイスをいただき、ぼくは混沌としていていいので、いきなり肥後琵琶を始めたい、とリクエストしたので、混沌である。今日は、いきなり最後の琵琶法師と言われる肥後琵琶奏者の後藤昭子さんのお宅を訪ねていった。

 

最初の2時間くらいは琵琶を弾くこともなく、後藤さんが肥後琵琶を始められた経緯を聞き、山鹿さんのレッスンがどんなものだったかを聞く。レッスンに言っても、山鹿さんが酔っ払っていて、ほとんどレッスンにならない時もある。来客がいてレッスンにならない時もあるが、来客が写真家だったり、ジャーナリストだったり、柳川瞽女の一座だったりして、交流するのが楽しかったそうだ。つまり、後藤さんは楽器と歌を教わったのではなく、そうしたカオスのような琵琶法師山鹿良之さんという人間を形成する全てを浴びたのだ。だから、具体的に楽器や節回しを学ぶことも大切だが、そうしたことを浴びることが今日のお稽古である。大変面白い。タイで民族音楽学者のAnant Narkkongに連れられて、達人の家を訪ねて行った時のことなど思い出す。

 

その後、後藤さん、小太郎さんが、それぞれ実演して道成寺を語って下さったりし、そこで演奏法など気になったことを質問すると、突然、技術的なレッスンが始まる。2回目の初心者がやるようなことじゃない、と言われながら、いきなりディープな奏法を練習したり。目の前に生きた教材がおられるのは、大変ありがたい。同じ演目でも後藤さんと小太郎さんの演奏は全く違う。同じ山鹿さんに習った片山旭星さんと後藤さんでは、全く違う。一つの正解があるわけではない。即興性もあり固定化できるものでもない。生きた芸能であり、他の肥後琵琶の動画も次々見せていただくと、全部違う。多様性とカオス。今日は、それが体感させていただき、その上でカオスの中から自分に合ったやり方を見つけていくのだ、と言われる。それはぼく好みのアプローチで楽しい。結局、4時間滞在した。

 

帰宅後は、高松市美術館の開館・閉館の音楽の作業をする。収録した皆さんの声を聞いて癒されながら編集が続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第150回だじゃれ音楽研究会

東京に移動。上野の森美術館でのVOCA展を見る。(熊本で知り合った)しまうちみかさんの作品など鑑賞。

 

東京藝術大学千住キャンパスで、音まち事務局と打ち合わせ。次年度の『だじゃれ音楽』について。2025年度に『千住の1010人』を開催する計画に向けて、来年度新たに連携をとれそうな足立区内での音楽団体、文化団体、相撲団体などと何かしてみようという方針。2014年に開催した『千住の1010人』では、金管やジェンベなど野外向きの大音量の楽器に対して、他の楽器にPAをできなかった。マイク数百本用意するのは無理。でも、ウクレレとか合唱とか音量が弱いものに対して、マイクで補強するやり方も、工夫できるのかもしれないなぁ。どっちにしても気休めかもしれないが、、、。たとえば、ウクレレ30人と金管一人とジェンベ一人をグループ1、ケンハモ30人と金管一人とジェンベ一人をグループ2、ギター30人とジェンベ一人とジェンベ一人をグループ3、、、、、以下同様、というようにグループ分けをする。などなど、音量バランスの不平等さをどう是正するかについては、要検討。でも、野外で音量的に厳しいと考えていた「声」に、今回は取り組みたい、と思っている。

 

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夜は、『第150回だじゃれ音楽研究会』。150回も続けていることが凄いが、来年度もさらに続いていきそうだ。Memet Chairul Slametが2020年に東京で初演するつもりで書いてくれた幻の作品《Rock Sing》を貝殻で12人で合奏。これを大人数で演奏するのも楽しそう。即興セッションをしたり、次年度に向けて話し合ったり。

 

昨年12月の大巻さんのメモリバの記録動画も公開されている。夜の部はピアノ弾いた。来年度も千住に足立区に、何度も足を運ぶことになりそうだ。

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豊永さんとのクリエーション

豊永亮さんとスタジオに入る。1990年、ぼくと豊永さんのデュオにヴァイオリンの澤民樹くん、パーカッションのBob Barrazaを加えてpou-fouを結成し、翌年にはホルンの小林薫さんを加えた。即興をしているうちに、共同作曲になっていった。

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豊永さんの場合は唯一無二なのは、彼がギターを手にした最初からフリースタイルだったことだ。ロックバンドのコピーをしたこともなく、コードを覚えることもなく、最初から無調であり、最初からノイズであり、最初から前衛なのだ。豊永さんがボサノバをやることも、ロックをやることも、既存曲を演奏することもなく、豊永さんはひたすら豊永亮の音楽をやっている。ぼくは21世紀になってから豊永さんとの共演はなかったが、豊永さんのギターはその後も進化を続けていた。

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昨年秋に豊永さんと再会し、二人で楽曲を作ろうと、時々スタジオに入っている。予定は未定だがライブもしたい。今日もスタジオに入った。前回の即興から豊永さんが切り出してきたモチーフをもとに、曲を練り上げていく。一つのリズムをやり続けることをルールとして、その中でどれだけ差異を出していくことができるか、とやり始めると、無限にできる。反復は反復ではない。色々試しているうちに、今日は方向性の違う2曲が生まれてきた。

 

Gareth Williams(1953-2001)は、豊永さんに紹介していただき、94~95年に何度も遊びに行き、いっぱい話をした。彼の作品もカセットで少しだけ持っているが、若干YouTubeでも聴ける。実験的ロック、フリーインプロのオルタナティブ・ミュージックの方々、Fred Frith(1949-)、Elliott Sharp(1951-)、Heiner Goebbels(1952-)、John Zorn(1953-)、Garethの同世代でいっぱいいて、70−80年代の空気感を想像する。Garethの音楽を聴き、彼と過ごした時間のことを思い出す。

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