野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

アフメドは語る 音にのせて(京都初演)

ディディエ・ガラスとの《アフメドは語る 音にのせて》の京都公演の初日。

 

琵琶は素晴らしい楽器なのだが、すぐに調弦が狂っていく楽器でもある。空調がきいたり温度変化などがあると、なおさらだ。そして、調弦が狂うと途端に楽器が鳴らなくなる。

 

演劇の音楽として、パーカッションやったり、鍵盤ハーモニカやったり、エレクトロニクスをやったりする合間に、琵琶を演奏している。すると、調弦をする間がない。だから、本番前も何度も何度も調弦して、どうかこのままでいて下さい、と楽器にお願いするも、琵琶は無情にも自由自在に調弦を変える。

 

でも、out of tuneになった調弦の響きも面白いので、それを楽しむのも良い。ただ、そうなると弦と弦が共鳴して相乗効果で楽器全体が鳴る時に比べて、音量ががくっと落ちる。だから、電気の力に頼り、マイクを通して鳴らしている。

 

ディディエの芝居も観客との交流でアドリブが入るけど、琵琶の響きもその日の空気によって変化していくので、即興力が問われる。肥後琵琶の山鹿良之さんの晩年の録音を聴くと、調弦がどうなろうと平然と弾いていて、逆にout of tuneであることで凄みが出てくる。

 

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鳥取では2公演とも終演後にアフタートークを設けたが、京都公演ではトークなしだった。公演を観た後、トークを聞くことで腑に落ちた観客もいたので、それも親切だったような気もしたし、トークなしの方が、最後の台詞が観客に刺さったままになって、それも良いのかも、とも思った。

 

「ことばのはじまり」や「アルルカン、天狗に出会う」の時の仲間達(照明の川島玲子さん、衣装の山本容子さん、俳優の坂口修一さん)が公演後にディディエとぼくにいっぱいアドバイスやヒントをくれる。明日は、また明日の公演にしよう。

 

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