野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

シベリウス/祇園囃子の八重桜と日田どん

熊本に戻ってきた。Guy Rikchards著Jean Sibelius 読了。フィンランドの国民的作曲家シベリウスの伝記(おそらく、イギリスを旅している時に、古本屋で買った)。ぼくはSibeliusという楽譜浄書ソフトを使っているが、作曲家シベリウスを熱愛しているわけではない。伝記の大半は、精神的にも弱さを抱え、お酒でベロンベロンになり、浪費してお金に困窮するシベリウスの話。晩年30年間くらいは、ほとんど作曲していない。それも、隠居生活に入ったとかではなく、交響曲第8番を作ろうと何度も着手し、初演の計画も組まれるが、結局、曲が書けない。こんなに(一般的に言う)「ダメな人間」が伝記になる国民的作曲家であることを知って、勇気づけられる人はいっぱいいるんじゃないか、と思う。シベリウスの美しい音楽とともに、アルコール依存症自助グループとワークショップで作った歌が並ぶようなコンサートとか、あってもいいのかも、とか思った。

 

https://www.amazon.co.jp/Jean-Sibelius-20th-Century-Composers/dp/0714847763

 

1月29日のパトリア日田での『どんどん日田どん!』に向けて、チェロとピアノの音楽を作曲している。台本を整理しながら、最後の日田祇園囃子の《八重桜》を祇園囃子保存会の演奏に、チェロとピアノが重なるように作曲していたのだが、このチェロとピアノの音楽が単に祇園囃子と共演するだけでなく、その中に、本編で演奏した様々な曲(合唱曲、吹奏楽曲など)の断片も忍び込ませた。約90分のコンサートは、冒頭で日田祇園囃子の《水郷節》が奏でられるが、一番最後で、日田祇園囃子にチェロとピアノが重なり、洋楽と邦楽が重なり合うだけでなく、90分の間に体験した大蔵永季の生涯を象徴する様々な楽曲が祇園囃子と一体になるような、そんな音楽にできたらなぁ、と思って、書いた。

 

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