野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

言葉のない演劇と楽譜のない音楽の出会い

子どものための演劇をイタリアで長年追求してきた美術家/演出家のダリオ・モレッティと制作の並河沙耶が、淡路島で「瓦の音楽」を行なっている音楽家野村誠とやぶくみこが出会い、2016年にテアトロ・ムジーク・インプロヴィーゾが結成され、淡路島での即興パフォーマンスで初共演の後、イタリアのマントバの児童演劇祭で公演を行なった。翌2017年には、城崎国際アートセンターで滞在制作をして、舞台作品「うつくしいまち」が誕生した。2018年には、水戸芸術館で滞在制作をして、水戸の要素を取り込んだ「うつくしいまち」に変化した。今年は、彩の国さいたま芸術劇場で滞在制作をして、埼玉の要素を取り込んだ「うつくしいまち」になっている。この作品を、9月には、イタリアのミラノとトリノで上演するが、そこには、城崎の風景も、水戸の景色も、埼玉の出会いも多層的に含まれる。この作品は、こうして旅をしながら、まちとの出会いが織り込まれていく。明日は、彩の国さいたま芸術劇場での公演で、いよいよ埼玉での滞在制作のクライマックスがくる。

 

今日は、通し稽古、ゲネプロと、本番に向けて、最後の調整になるリハーサルを行い、修正点などをチェックしていった。そして、昨年の水戸芸術館での公演のビデオを、見直してみた。水戸の本番と、今の埼玉バージョンは、意外に細かく微妙に違っている。人間がやる生の舞台だから、常に変化するのだが、埼玉で見たものに微妙に影響されて、ちょっとずつシーンが変化している。水戸の公演のビデオをチェックすることで、明日の公演に向けて、さらに微修正していけそうなので、細かくチェック。また、今日のリハーサル(ゲネプロ)のビデオを見て、明日の本番に向けて、最終チェック。

 

それにしても、美術家と音楽家と音楽家の3人が出演者の演劇で、いわゆる俳優は一人もいない。こんな演劇があり得るのだなぁ。ダリオさんも、やぶさんも、もともと演劇バックグラウンドの人で、舞台のことに詳しい。ぼくは、演劇に疎かい音楽家だったけれども、「しょうぎ作曲」という共同作曲の方法を考案したら、音楽なのに演劇みたいになってきて、演劇と音楽の境界に興味を持ち始めた。ところが、演劇の多くは戯曲の言葉に支配されることが多く、音楽の多くは楽譜の音符に支配されることが多く、お互いが交わることが少なかった。でも、テキストも楽譜も使わないで、音とビジュアルで演劇が実現する。そんな意味を超える世界を、テアトロ・ムジーク・インプロヴィーゾは追求している。

 

テアトロ・ムジーク・インプロヴィーゾ「うつくしいまち」(@彩の国さいたま芸術劇場)8月4日、14時開演。当日券もございますので、お近くの方、ぜひ、ご来場ください。