野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ルールは従わなければ変えられる

日本への帰国も、カウントダウン。香港滞在も残り18日となりました。

本日は、参加型演劇プロジェクトTo Behold to Voice to remapに参加してきました。キュレーターと研究者の人の仕切りで集められた4人のアーティスト(ダンサー、美術家、映画監督、パフォーマンスアーティスト)が、毎回、参加型演劇を模索する実験の場。

本日は、4人がそれぞれ45分ずつ実験を行い(合計3時間)、最後に1時間ディスカッションをする、というものでした。今回は、それぞれのアーティストが何らかのルールを設定し、それに従って観客が参加していくというもの。映画監督の人のルールは、他の人は喋ってはいけない、指示に従わなければいけない、というもの。で、延々、紙を拾いなさい。その紙を床に置きなさい。また拾って。と言った具体に、無益な指示をし続ける。それは次第に暴力化し、紙を丸めて、そこにいる人目がけて投げつけろ、と言う。徐々に、参加者は、この権力者の指示に不快感を覚え、時に反抗したり、無視したりしようとする。ぼくは、逆に、このみんなから嫌われ厭われる権力者が孤独で可哀想な存在に思えてきた。この役を45分やり続けた彼に、エールを送りたい。実際に、権力者として、怖い顔をし続けて命じ続けることは、本当に苦痛だったそうだ。もちろん、この彼のパフォーマンスは、様々な社会にある権力のメタファーであり、そうした力に抗うのか従うのかを、問われる体験だった。既存のルールが維持されるのは、そのルールを守る人々がいるからだ。

ディックは、1分間ごとにポーズを変え続けるパフォーマンスを提案した。ぼくは、その中で時々、楽器で音を出す、という役目をいただいた。1ヶ月前の会では、こうした実験的なパフォーマンスに慣れ親しんだメンバーが多かったが、今日は、初めて参加する人が多かったこともあり、戸惑う人々がいっぱいいた。



その後、明日、帰国する小日山拓也さんと夕食。小日山さんとの濃密な1週間でした。