野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

浮音模様

豊橋愛知大学へ向かう電車の中で、「Carlos Chavez and his world」(princeton university press)を読んで過ごす。一つ目の記事が、チャベスと当時のアメリカ近代音楽の関係を、ニューヨークでの雑誌の記事を元に読み解いていくもの。二つ目は、チャベスとヘンリー・カウエルの関係に焦点を当てたもの。どちらも面白い。

愛知大学で授業。前半は学生さん達の質問に答えていきながら、野村の紹介をしていく。15名ほどの学生一人ずつからの質問に、全て答える。後半は、学生たちに「何がしたいですか?何を期待して今日の授業に参加しましたか?」と質問して、あまり返答が返って来ないところで、沈黙の時間になり、沈黙を味わうところから、即興演奏に。しばらくは、参加せず、途中から徐々に学生も参加。終わった後に尋ねると「途中は、参加したい気持ちもあり迷ったが、参加するのが正解かどうか分からず、待って様子を伺った」との感想をもらう。「正解」について話し合う。そして、「やりたいことがあって、迷った場合は、やってみる」というルールだけで、もう一度、即興の時間を持つ。これを踏まえて、来週、もう一度授業に来ます。

その後、大津のながらの座・座に移動。やぶくみこさんの演奏、かなもりゆうこさんのインスタレーションの「浮音模様」に行く。川島玲子さんの照明でのお庭、かなもりさんの繊細な美術作品の中で、やぶさんが演奏。彼女のグンデルの演奏は、ジャワのガムラン音楽とは全く違うテイストで、通常のグンデルの演奏は、打音した音を次々に鳴らす音の粒でビートを刻むのですが、やぶさんのグンデルは、グンデルが響いている音の伸びを聞かせる。しかし、音響そのものを聞かせるのではなく、音の響きを最大限に味わいながら、ゆったりと心地よくメロディーを奏でる。こうした試みを、スレンドロ音階のグンデルのために、何曲も曲をつくっている。ペロッグ(バラン)音階での即興演奏もありました。かなもりさんのハーブティーをサーブするスタッフが、かなもりさんの以前の映像作品に何度も登場している方々だったので、直接はあまり話したことがない人ですが、妙に見覚えがあるので、不思議な距離感を感じながら、お茶をいただく。

帰り道に、ダンサーの山下残くんと、色々語り合う。

浮音模様は、15日、16日にも、箏曲家の松澤佑紗さんをゲストに招いての公演があります。

http://nagara-zaza.net/2016/000307.php