野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

荒井良二さんと山形じゃあにぃ

山形に来ております。15年前に田中悠美子さんと片岡祐介さんと3人で演奏して以来の山形。本日の会場は15年前と同じ文翔館。絵本作家のミロコマチコさんも、別のプロジェクトでいらしていて、ぼくは絵本作家/画家の荒井良二さんと即興スペシャルセッション「山形じゃあにぃ」をするのです。

会場内で水を使ってはダメ、液体の使用不可などの制約があるため、荒井良二さんは絵の具でのライブペインティングができないのです。どうしようかなぁ、と唸る荒井さん。会場にあるマイクスタンドを何本も立てて、柱を作り、そこに糸を張り巡らせて五線を作ったり、トイレットペーパーを準備したり。徐々に、荒井空間を作っていくのです。開演前には、舞台は荒井ワールドになっていました。それは、画面に少しずつ描いているうちに絵ができていくように、最初は分からないところに世界が生まれる感じなのです。先に図面を書いて、それを微修正するようなやり方ではないのです。画家の空間構成でした。

東北芸工大の学生さんたちとお弁当を食べながら、おしゃべり。山形から隠岐に行くのに、青春十八切符で行ったという強者女子学生もいました。見た目は全然強者に見えないので、電車の中で色々お菓子や食べ物をもらったりするのだそうです。2015年なのに、ぼくらが学生の頃の感覚に近くて、なんとも嬉しく思いました。

お客さんはいっぱい入って、ああ、これまで山形で荒井良二さんと東北芸工大の皆さんが培ってきた歴史を感じます。約2時間の荒井と野村による即興セッションの時間です。荒井さんが自由な方なので、もうこちらも遠慮なく楽しんで演奏したり、喋ったり、歌ったり、遊んだり、できました。感謝です。

途中で足踏みオルガンを高速で踏みながら演奏しているうちに、歌った歌が、多くの方々から印象に残ったと言われた歌でした。オルガン、オルガン、オルガンおるおる、ガンガン、こどもの事情、おとなの事情、二乗、三乗(参上/惨状)、四乗(私情/詩情)、五乗、平方根、指数関数、三角関数、サイン、コサイン、タンジェント、から始まり、気がつくと、大人の事情と子どもの事情の狭間で、「怒られてもやれー」、「怒られるまでやれー」、と歌っていました。

あいのてのセットと荒井さんと一緒に演奏するなんて。荒井さんは、途中で即興民謡を歌ったり、最後には、「民謡をみんなで歌ってみんよー」と言ったりして、来年の山形ビエンナーレが楽しみな2時間でした。