野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

アトリエ劇研にて

本日、アトリエ劇研にて「ことばのはじまり」の稽古でした。明後日より、本番が始まります。照明あり、舞台装置あり、衣装ありでやると、テンションあがります。それにしても、クリエイションの現場が、楽しいです。照明のラリーさん(吉本有輝子さん)も含めて、みんなでワイワイとアイディアを出し合って、シーンが変わっていきます。ディディエは、キャストに対して、信頼が日々増しているようです。全てを固定してしまわず、所々に即興の余地を敢えて残して、毎回新鮮に自然な流れで演じられるようになってきています。制作の杉山さん曰く「どこが即興でどこが決まっているのか分からない」。

(以下の坂口さんのブログに、写真あります)
http://blog.livedoor.jp/sakaguchi1975/archives/4165598.html


音楽が、随分多彩になりました。この春に淡路島で粘土から作った瓦楽器でのデュオもあります。ジャワガムランのグンデルと鍵ハモのデュオもあります。ダルブッカとペットボトルによるドラミングもあります。やぶくみこさんは、本当に演劇/ダンスを良く知っている人で、出す音が非常に的確なのです。各シーンの特徴を捉えて、シーンを効果的に引き出す音を添えていきます。共演していて、毎回驚きに溢れてる音楽が立ち上がり、楽しいのです。

そんな中で、一ケ所だけ一人で演奏するシーンがありまして、松尾恵美さんの素晴らしきダンスに、ソプラノ鍵ハモのソロで演奏するのですが、毎回味わい深いのです。松尾さんのダンス、日々良くなっていて、演奏しながら魅入ってしまうのです。やぶさんのソロ演奏で踊る森川弘和さんのダンスも凄いですよ。この人の身体の柔らかさやしなやかさは、尋常ではありません。人間じゃないかもしれないと思います。逆に、とことん凄い人間だと思わせてくれるのが、毎月のように即興演劇の公演「すっぴん」もされている俳優の坂口修一さん。ディディエからの無茶ぶりを毎日取り込んで、毎回見事な演技を見せてくれて、みんなを笑わしてくれます。どんな無茶ぶりが来ても、決して「無理」とか「できない」と言わずに、果敢に挑んでいきます。凄いです。和太鼓奏者で長身の小島功義さんの鍛え抜かれた肉体が繰り出すエネルギーは破壊力抜群なのですが、時に脱力した演技をする時のギャップも味わい深いのです。そして、5人の中で最も小柄なきたまりさんも、存在そのものがダンスであり、時に凄く軽く、時に凄く重く空間に存在し、時に子どものようであり、時に何百年も生きた精霊のように存在するのです。「ピナ・バウシュがタンツ・テアターだったら、この「ことばのはじまり」は、ムジーク・タンツ・テアタ―となるでしょう。音楽×ダンス×演劇。ぼくはダンスも演劇も大好きなので、こうした形で、がっつりと創作に関われたのは、本当に幸せです。

それにしても、稽古の後、「あのシーンが良かった」、「ここは、もっとこんな感じで」と身振り手振りを入れながら、説明するディディエは、次第に興奮して、どんどん自分で実演をし始めます。これが、もう一人芝居と言いますか、メチャクチャ面白い。今日もいっぱい笑いました。

今回の会場であり主催でもある「アトリエ劇研」は、かつて「アートスペース無門館」という名前で、30年前に遠藤さんというおばさんが始めた小劇場でした。27年前、大学に入学したての1回生の頃、人生で初めて小劇場演劇を観に来たのも、ここ無門館でした。その後、カリスマ支配人の遠藤さん亡き後、アトリエ劇研と名前を変えて、ついに30周年。30周年記念公演として、ディディエ・ガラスと「ことばのはじまり」を作っているわけですが、出演者の中には、30歳前後の人々がいたりもします。あの遠藤おばちゃんが、こうした場所を作った頃に産声をあげた人々が、こうして活躍している姿を目の当たりにするのは、嬉しい限りです。遠藤さんも、きっと喜んでおられることでしょう。



ディディエ・ガラス ことばのはじまり

9月4日 19:30-
9月5日 19:30-
9月6日 14:00-/19:30-
9月7日 14:00-
9月8日 14:00-

前売:2,500円
当日:2,800円
学生:1,800円(前売/当日とも)
こども(中学生以下):1,000円(前売/当日とも)

会場:アトリエ劇研(左京区下鴨塚本町1)
お問い合わせ:アトリエ劇研:info@gekken.net (075−791−1966)
http://gekken.net/kotobanohajimari/

作・演出:ディディエ・ガラス
出演:森川弘和、坂口修一、小島功義、松尾恵美、きたまり
音楽:野村誠、やぶくみこ
演出アシスタント:中筋朋
照明:吉本有輝子
舞台監督:浜村修司
宣伝美術:永尾美久
制作:杉山準

みなさん、お待ちいたしております。是非、劇場に足をお運び下さい。