野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ギギーとのリハーサル

ギギー君との今日のリハーサル(=共同作曲)で、曲が一気に進展した。昨日の時点で

1)ドドンのテーマ
2)船の歌
3)カリマンタンの樹々の踊り
4)船の歌
5)日本
6)田舎の風

となっていた。ギギー君は、「田舎の風」のアイディアを考えてきていて、
「一人がジャワの音階(GBCDF#)で演奏して、もう一人が日本の音階(EF#GBC)で演奏したらどうか」
と提案してきた。この音階を比べてみると、GBCF#の4音が共通している。ということで、最初はGBCF#の共通する4音から始めて、途中でそれぞれの5番目の音を加えて、ギギーの提案通りに演奏してみる。この音楽が、ギギーのイメージとは違ったようで、それを修正すべく、
「音階だけじゃなく、ジャワのリズム、日本のリズムで演奏してみよう」
と提案してきた。要するに、キャラクターの違う2つの音楽が共存している感じにしたいのだろう。ただ、日本のリズムで演奏してくれと言われても、まぁ、日本は広いし、日本の音楽も多用なので色々あるわけで、どう解釈していいか困るが、あまり深刻に考えずに、さっさとやるのがインドネシア流。咄嗟に思いついた「綾子舞」の太鼓を吹く。ギギーは、スンダのメロディー風に吹いている。これだと、ぼくが伴奏でギギーがメロディー。そこで質問。
「日本のリズムと言われたから、ぼくは太鼓のリズムやってるんだけど、ギギーは何やってるの?」
「ぼくは、スンダのメロディーは、こういうリズムの特長があって」
「要は節回し、アーティキュレーションってことか。ちなみに、スンダの太鼓風にやるとどうなるの?」
ということで、今度は逆に、ぼくが和の節回しでメロディーを吹き、ギギーがスンダの太鼓風に伴奏する。メロディーが和風なのに、伴奏はジャワ風。さっきは、ギギーがスンダの節回しでメロディーを吹き、ぼくが日本の太鼓風に伴奏だった。この二つが交互にしながら、2回目に登場する時は、日本の太鼓のリズムだがスンダの音階で伴奏、スンダの太鼓のリズムだが日本の音階で伴奏、としてみた。そして、それを経て、お互いが自由に演奏する。
「最後の部分が『田舎の風』で、その前は、日本人とジャワ人が対話しているみたいだね。」
「ドドンは日本に来て、誰かに出会うことにしよう」
ということで、この曲は「ドドンとダルマの対話」となった。そして、全曲通してやってみることに。ギギーの提案で、イントロを追加

1)イントロ
2)ドドンのテーマ
3)船の歌
4)カリマンタンの樹々の踊り
5)船の歌
6)日本
7)ドドンとダルマの対話
8)田舎の風

という構成になる。「船の歌」が2回出てくるのが、中途半端な気がするので、
「1回だけ出るか、それとも4回くらい登場するか、どっちがいい?」
と聞くと、ギギーは
「この曲はいい曲だから、4回」
ドドンは、カリマンタンと日本だけに旅をするのではなく、スマトラ、バリ、カリマンタン、日本に旅をすることに。どうして、こんな旅行をするのだろう?考えているうちに、ストーリーができあがる。ドドンはカリマンタンに樹々の踊りを学びに出かけるのに、間違って、船がスマトラやバリに着いた後に、カリマンタンに到着する。そして、カリマンタンからジャワに帰ろうとするのに、間違って日本に到着する。そこでは、放射能汚染と共存する世界で、ドドンもパニックに陥るが、ダルマさんと話をして…。
「ドドン君とダルマさんって、ギギー君とぼくの関係にそっくりだね。」
「ってことは、二人が話し合って、最後にmusik tradisi baru(新しい伝統音楽)を始める」
「ってことは、ここまでが長い長いイントロで、ここから、本編だよ。」
ということになる。

1)序曲
2)ドドン君のテーマ
3)船の歌
4)Gardika Gigih「Kampung Halaman」より、スマトラのメロディー(これに合わせて、野村スマトラの手踊り)
5)船の歌
6)バリ
7)船の歌
8)カリマンタンの樹々の踊り
9)船の歌
10)日本
11)放射能
12)ドドン君とダルマさんの対話
13)新しい伝統音楽


これを、全部通して(途中で即興的な芝居を盛り込みながら)演奏してみることに。途中「カリマンタンの樹々の踊り」を演奏している時に、稽古を終えた演劇のグループ?の学生3人が、笑顔でやって来て、リハーサルを聞いてくれる。曲が進むにつれて、通りがかった別の学生も観客になって、気がつくと10人ほど。最後は拍手喝采でアンコール。
「君達は、学生?」
「ガジャマダ大学の演劇のグループ」
「何か日本の歌やって」
「じゃあ、ワニバレエ
ということで、NHKワニバレエ」を演奏する。


ワニバレエ」の踊りを知らないのに、学生たちは、ワニバレエ〜〜〜のところで、ノリノリで踊り、と〜し〜とった〜〜のところで、ゆっくり踊る。「でも」と自分達で言ったりする。

その後、ギギー君と場面ごとに入れるナレーションを考える。ナレーションは、全てぼくが読むことになった。