野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

文楽を観に行きました

文楽を生で観るのは、本当に久しぶりです(多分20年ぶり)。大阪市長から、色々と批判されている文楽は、一体、どんなにつまらなくなっているのか、相変わらず素晴らしいのか、確かめる意味もありました。

これが、予想以上に良かったのです。昔に見た時とは、違った印象で、かつての名人が引退され、世代交代が行われて、それはそれで別のテンションを生み出していて、その中に、未来に生き続けている文楽の可能性が垣間見える気がしたのです。芸能は、完全に固定化されて博物館に入ってしまうと、変化せずに死んでしまいます。でも、出演者が精進し、先人の流儀を自分の身体に落とし込もうと試行錯誤している現在形がある限り、芸能はまだ生き続けている、と思うのです。まして、大阪市長に批判され、存続の危機と直面しているために、出演者にも観客にも独特の熱があって、その場に立ち合えたことも、非常に幸福な体験でした。

ただ、大阪市長文楽を楽しめていないのは、政治的な思惑だけでなく、本心なのだと思います。音楽、人形、美術、ストーリー、歌、効果音、芝居、舞踊など、様々な入り口がある文楽を楽しめない人もいるのだなぁ、と公演を見て驚きました。あれだけ分かりやすい公演だったら、みんな楽しめるのでは、と思ってしまいましたが、大阪市長が楽しめていないのは、本当なのでしょう。現在の公演形態自体を変える必要はないと思いましたが、市長が楽しめるような教育プログラムを作ってみると、いいのかもしれませんね(現行の教育プログラムがどんなものか知りませんが、それでも十分かもしれませんが、、、)。