野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ワヤンの子どもの家で

6月2日のコンサートまで、あと4日です。今日はコンサートに向けて、鍵盤ハーモニカを買いに行きました。韓国製のメロディホーンの37鍵盤が、2880円で売っているので、購入。現在、日本でも韓国製の鍵盤ハーモニカを一台も持っていないので、購入しました。
 で、帰ってから、ギギー君とリハーサル。韓国製の鍵ハモよりも、台湾製の鍵ハモ(リンコ)の方が音が立つから、そっちを使って欲しいと、ギギー君。しかし、台湾製は、ホースが柔軟ではなく演奏の姿勢が非常に限定されるので、韓国製のホースを使ってみたら、見事にフィットしました。本番は、台湾製の鍵盤で、韓国製のホースを使って演奏することになりました。
 全プログラムにタイトルをつけてみました。最初のぼくのソロは、「Pak Darma Bermimpi(ダルマさん夢を見る)」というタイトル。続いてのギギー君との鍵ハモデュオは、「Pak Darma Berdarmawisata(ダルマさん修学旅行に行く)」となりました。このデュオは、ある意味、ギギー君と一緒に勉強してきた成果で、色んなところに旅をする感じでもあるので。旅に行った後は、ギギー君作曲の「Kampun Halaman (故郷)」とぼくが作曲の「Pergi Jauh Dari Rumah Dengan Telur-Telur(たまごをもって家出する)」の2曲をピアノで弾きます。そして、最後にセッション「Pak Darma Bertemu Kawan Lama(ダルマさん旧友に会う)」という流れです。
 ギギー君とのリハーサルを経て、6歳のダラン(伝統影絵人形使い)エブン君の家に行きました。行くと、10歳の兄エルド君やご両親などが、既に楽しみに待っていて、行くとすぐに楽器を鳴らし始めてのセッションが始まりました。前回は戸惑ったり緊張していたのですが、今日は、すっかりリラックスで、楽しみまくりです。それにしても、チルボン(ガムランの太鼓)を巧みに抜群のリズム感で満面の笑顔で叩く10歳と、既に風格がある6歳の人形使いと即興セッションをしているのは、得難い体験です。帰国までに、何度もここを訪ねたいなぁ。やぶさんが叩くダルブッカの演奏を真似して、エルドがダルブッカを叩きました。何も教えていないのに、既に、同じ姿勢で同じ叩き方で、結構、いい感じに叩くのです。頭で考えず、形からすっと習得していく彼らにとって、これはジャワの伝統音楽、これは外国の音楽、これはコンテンポラリーなどという線引きなど当然存在しないので、見たものを差別なく、全部そのまま吸収していきます。伝統音楽とドラえもんの歌を同じ次元で楽しむところが自由だと、つくづく思いました。こうやってセッションしている間に、ご近所人々が、何か面白そうだなぁ、といつの間にか覗きに来たり、帰って行ったりします。
 帰り際、ワヤンの専門書を出して、挿絵を指差しながら、兄弟で、これはスマル、これは、クレスナなどと、キャラクターの名前を説明してくれます。まるで、ポケモンのカードを見せながら、ポケモンのキャラクターを説明する子どものようなのですが、持っているのは、伝統の影絵の専門書です。そして、文字はまだ読めないエブン君は、字の書いてあるページには、もちろん興味も示さず、次々にページをめくり、絵のあるページを開けては、次々に説明していきます。日本に置き換えて考えれば、例えば、文楽人形使いが趣味の6歳が、文楽の専門書を指差しながら、説明してくれるようなものでしょうか?
 明後日は、実際に会場のTembiに行ってセッションをすることになりました。