野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

勇気を持って暇にする

これは、ずっと言い続けていることかもしれません。日本のアート関係者の中でも、色々な復興支援のアクションが起こっているようです。メールなどで、色々な連絡が来ます。

東京のアート関係者の方々、ぜひ、関西のアート関係者に電話したりして、話してみて下さい。阪神大震災の復興を経験している人のノウハウを、今回の復興のノウハウに生かすべきだと思うのです。

関西の人は、関東や宮城などの人と、できるだけ連絡をとってみて下さい。

関西の人と関東の人を結びつけられる人、そういうつなぎの仕事をしてみて下さい。そうした連携や連鎖が必要だと思います。

復興のための仕組みづくりや財源確保など、迅速にやらなければいけない点もいっぱいあると思います。と同時に、実際の復興支援のアートプログラムは、慌てず急がず。全てのプロセスが重要になってくるはずです。丁寧に時間をかけて、一つずつ、ゆっくりやることが重要と思います。

今日、いろいろメールを出しました。なんというか、緊急事態で、大変な時に、みんなが慌てて動いている時に、思いっきり、のんびり構える役割の人も、必要だと思うのです。非常事態ですごく頑張っている人がいっぱいいます。それは、素晴らしいです。多くの人が頑張っていないと、本当にどうにもなりません。

でも、でも、です。

99人頑張っている人がいる中で、一人くらいは、怠けたり、ゴロゴロしたり、ちょっと考え事をしたりする役割も必要な気がするんですね。のんびりさん。ゆったりさん、が世の中からなくなるのが、心配なんです。

勇気を持って、忙しくし過ぎないこと。働いている、動いていると充実感があります。でも、怠けているのは、罪悪じゃありませんよ。こんな時期に遊んだり、のんびりする人が、半年後に力を発揮できるかもしれないですから。空き時間を使って、日本の未来について、十分過ぎるくらい時間をかけて話すこともあっていいし。それを急ぎ過ぎずに。

以下、本日送ったメールより抜粋。

インドネシアは、色んな人が病気で行けない、と言って、簡単に用事がキャンセルにできます。この国は、衛生上でも過酷な状況なので、無理すると、本当にヤバいから、休むのが当然という感じです。しかも、仮病で約束キャンセルする人も、多いのです。それも含めて、許されているゆるさがあります。

逆に、日本は、病気でも薬でごまかしてでも、働かなくっちゃ、という雰囲気があって、しかも、症状を緩和する薬もあったりして、病気自体は治っていないのに、働ける状態にできたりする。病気でも休めない雰囲気が、ちょっと怖いです。

インドネシアの人を見ると、少しは働け、と思うし、日本の人を見ると、ちょっとは休んで、と思う。

震災で大変な時に、グータラなんてとんでもない、とか、そういう雰囲気、きっとある気がする。でも、時には休んだり、怠けたり、ゆるんだりしないと、力が出せないと思うのです。

「今までと変わらないように過ごす」→「忙しく過ごす」→「考えたくないことから目を背けて過ごす」となっていかないかが、心配です。

なんかねー、みんなでゴロゴロとリラックスしながら、雑談していて、そんな中から日本の未来が出てくるような、そんなイメージを思うのですよね。緊急時のテンションって、そんなに長く続かないんで、持続可能な復興支援モデルを考えた時に、緊急モードじゃなくって、のんびり持続可能モードが、必要になってくると思うのです。

まぁ、まずは、東電の悪口でも、政治家の悪口でも、一通り言って、まずは、その辺のことを十分吐き出して、地震の恐怖とか、放射能の恐怖とか、不安も思いっきり吐き出して、そういうのを全部吐き出した上で、でも、「今、我々に何ができるのか」と、急いで考えるのではなく、10年単位、20年単位で、2020年の日本、2030年の日本が、取手が、宮城が、世界がどんな感じか、それをイメージしながら考えてみる。

今回の災害の精神的な打撃は大きいので、時間をかけてやっていかなければいけない。焦る必要はありません。今は、震災直後のテンションですが、いずれ、被災者のことはマスコミからも、みんなからも忘れられて見放されてしまう。そして、経済が悪化して、ますます暗い気分が、国中に満ち溢れてくるかもしれない。そうなった頃にこそ、精神的な面も含めた真の復興が必要になる。それが、日本全体を活気づけることにつながっていく。

あと、今まで隠蔽されてきた問題が、少し表面化したことは、良いことです。地震だって、原発だって、あるのに、みんなない振りして生きています。今回で顕在化できたので、みんなで、そのことを考えようという機会を作りやすくなります。これも、ゆっくり始めましょう。

とか書いてますが、ぼく自身が焦りそうだから、戒めてる部分もあると思うんですよね。だから、こちらでも、予定を詰め過ぎないようにしようと思って、過ごしています。