野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

500年前のガムラン〜スカテン

今日は、祝日。モハメッドの誕生日らしい。王宮の近くで行われているスカテンを見に行く。出店がいっぱい出ていて、すごい人混み。人が多いのにうんざりしながら、ガムランのところへ。スカテンというのは、北のガムランと南のガムランで、交互に演奏するものらしい。500年以上昔から伝わる古い楽器を演奏しているらしく、楽器は、現在のガムランよりも大型でシンプル。

北のガムランを聴いて驚いたのは、ペロッグ音階なのだが、現代のサロンでは、《1234567》の7音が順に並んでいるのだが、《5671234》の順番になっていること。曲は、《56723》の5音を中心に使いながら、時に1の音(左から4番目の音)も登場し、曲の後半では、ついに4の音(一番右の鍵盤の音)が出た。この4の音が現代の4の音よりも半音低い音で、この音が出た時は目玉が飛び出るほど驚いた。

続いて、南のガムランも聴いてみようと思っていくと、こちらもペロッグ音階だったが、《4567123》という順番になっていて、北は最高音が4で、南は最低音が4になっていて、この4は、やはり現代のペロッグの4よりも半音近く低い。曲は、《45612》の5音を中心に使いながら、時に7の音(左から4番目の音)も登場し、曲の後半では、3の音(一番右の鍵盤の音)も登場した。響きは全く違うが鍵盤の上の動きとしては、同じ性質を持っている双子の関係のような曲だ。

どちらの曲も非常にゆったりとして、渋い曲で、単調だけれども、次の音の進行が想像もつかない不思議な音楽だった。良い物を味わいました。

現代のガムランはスレンドロとペロッグという二つの音階を主軸に存在しているが、この2曲を聴いて、もともとは全然違う音階からスタートしてたのだなぁ、というのが、本日の発見。無病息災のための儀式でもあるようで、今年一年の健康を祈願する初詣のような、2月なので吉田神社の節分祭に出かける気分のようなお祭り体験でした。