野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

落合多武展での美術家によるオーケストラ@ワタリウム美術館

某テレビ局で、鍵盤ハーモニカに関する番組の打ち合わせをした後、ワタリウム美術館に美術家のみのオーケストラを見に行く。

展覧会は、これ。
http://www.watarium.co.jp/exhibition/1005tamu/index.html#ev

出演者は

伊藤存(ギター)
青木陵子(風鈴)
ニシジマアツシ(サウンドエフェクト)
南高雄(スタイルフォン)
大木裕之(ガスを吸った声)
荒木悠(プチプチ/ワイングラス)
橋本史生(ギター)
木村友紀(ホッチキス/ベース)
落合多武(猫彫刻)

アーティストオーケストラオセロットは、現代美術作家ばかりで構成されるオーケストラ。大木裕之さんは映画監督だけど、実は以前、ぼく+大木さんで、大木さんの上映会の前に、二人でピアノの即興をしたこともあり、独特なフリーインプロをすることは知っていた。木村友紀さんも美術家で、でも、以前、京都芸術センターで、山下残坂本公成(ダンス)、藤本隆行(照明)らと一緒に、木村さんとパフォーマンスを作ったことがある。

そんな前情報はあるものの、美術家ばかりなので、すごいへなちょこなものか、と想像しつつ、へなちょこ具合を楽しみに行ったのだが、予想以上に、ちゃんとした音楽パフォーマンスになっていた。メンバーの中に、ニシジマアツシ君がいたこともあるのだろうけど。

しょうぎ作曲のようでもあり、ケージの音楽のようでもあり、ノイズのコンサートのようでもあり、フルクサス的なパフォーマンスアートのようでもあり、そうしたものが美しく主張し過ぎずに共存している音楽会だった。

それにしても、木村友紀ちゃんとか、伊藤存くんなどの美術家を、ミュージシャンとして京都から東京に招いてしまうワタリウムと多武さんの勇気のあること。それを引き受けて、東京までやってきてしまう勇気。そして、それを入場料をとって見せる勇気。そして、それをお金を払って見に来る人の勇気。こうした冒険心が重なってコンサートが行われていることを、幸福に思う。

美術家だけを集めて、音楽会を催すというのは、音楽家だけを集めて、ダンス公演や演劇公演をするとか、美術展をするのに等しい。こうやって美術家が音楽活動をするのを見ると、音楽家だけを集めて、演劇をやってみたい、という欲望にも駆られるのだ。勇気を持って、やってみたい。