野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

女を捨てる〜モモンガ・コンプレックス公演

モモンガ・コンプレックスのダンス公演を見る。2月に上演した作品の再演で、初演も見ているのだが、再演をすることで、断然よくなっていた。

初演は、2月14日の時期に行われたので、ヴァレンタイン・デイをテーマに、作品を作っていたのだが、再演は、5月。同じ作品を上演しても、ヴァレンタインは関係ない。

同じ作品が文脈が変わることで、違った面が浮き彫りになったり、違った解釈ができるようになる。だから、新作を作ることも大切だが、再演をすることは本当に大切だと思う。

「モモンガ・コンプレックス」というのは、若くて美形のかわいい女性ダンサーの集団で(個性的なルックスの男性キャストは全部客演)、ヴァレンタインをテーマと言っても、「この人たち、かわいいし、もてるに決まってるやん!」と思われるくらい美女ばかりなのだ。だから、初演を見た時には、「もてない」とか「片想い」などのメッセージは、記号的には理解できるけれど、ダンサーの身体を通しての説得力は、それほどでもなかった。

で、本日の再演で良かったことの一つは、これらの女性美形ダンサーが、以前よりも毒気や狂気の度合が高まっていて、「この人たち、かわいいから、普通にしてたら、もてるだろうになぁ」と感じられる程度に、女を捨てていたことだ。日常生活を長年かわいい女性という立場で生きてきた女性が、知らず知らずに身につけている身体感覚(それは、ある種の癖といってもいい)を、一度、ゼロに戻すこと。それが、できていた。

タンバリン、トライアングル、せんべい、ウッドブロック、ダルブッカ、玩具などの打楽器を中心とした音楽は、和楽器は一切使っていないのに、リズム感も音のセンスも和を感じさせるものになっていて、そのテイストが、ダンスをより新鮮に見せていた。


ということで、再演するのは、いいですねー。
新作を作るのも大切ですが、それらを再演していくことは、もっと重要だと思うのです。だから、ぼくは、鍵盤ハーモニカトリオの作品委嘱は3分の作品にしています。これは、再演の機会を増やすことが、一番大きいのです。そして、何度も何度も再演しながら、作品の可能性を浮き彫りにしていこうと思うのです。