野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

歌の住む家

エイブルアート・オンステージ参加の即興からめーる団の「歌の住む家」プロジェクトも、いよいよ1ヶ月後が公演です。昨夜、お花見をしていた即興からめーる団の皆さんが、花見をしているうちに、だんだん不安になって、相談したいことが膨らんで、相談の電話がかかって来ました。

そこで、この公演の監修をしている徳久ウイリアムさんと電話で話をしました。話をしていくと、不安というよりは、楽しみが膨らみました。

公演は、慶応大学の教室を使って行うそうで、電話したときは、ちょうど大学にいた時だったようです。コンセプトは、授業参観ということで、出演者やお客さんも、教室で授業を受けているのか、それとも授業参観をしているのか、はたまた怪しい講義をしているのか、それは、行ってみてのお楽しみですが、学校という空間だからこそできる内容になるそうで、楽しみです。

で、ウイリアムさんと話したことが、複数のゲストアーティストが関わるプロジェクトについて、いろいろなことを考えるきっかけになったので、ちょっと自分の考えをまとめるために、書いてみます。

歌の住む家の20回近いワークショップの全部に参加しているのは、即興からめーる団で、ゲストアーティストの3人(安野太郎さん、中ムラサトコさん、徳久ウイリアムさん)は、各3回ずつくらいワークショップをしているそうです。一昨年に神戸で大友良英さん、江崎将司さん、林加奈さん、森本アリさんが参加した「音の海」でも、やはり各アーティストのワークショップは各3回程度でした(注:これは、ぼくの思い違いで、もっと回数は多かったようです。)。「音の海」の場合、全部のワークショップに参加した森本さんが、他のアーティストとのつなぎ役になったそうです。だから、森本アリさんが担った役割を、即興からめーる団が担えばいいな、と思いました。

では、「音の海」で森本さん以外のアーティストは、どういう役割を担っていたのでしょう?ぼくは、このプロジェクトに直接関わっていないので、人づてに聞いた曖昧な情報なので、そこは差し引いて読んでいただくとして、それでも、考える上で、とても参考になると思うので、書いてみます。

大友さんは、唯一、東京在住なので、一人遠くから時々やってくるおじさん、と自分を位置づけていたようでした。そして、公演直前になって、大友の部屋と呼ばれる子どもたち一人ひとりと大友さんによるセッションのコーナーを、1時間近く設けたのでした。このコーナーをやるにあたっては、森本さんとのコミュニケーションも重要だったであろうと、想像します。

林さんは、スタッフや親とのコミュニケーションを大切にしようと考え、スタッフや親とも音楽作品を作ったりしていました。

江崎さんは、知的障害児の音を味わうというスタンスで、その繊細さ、美しさ、そういったものを、全身で感じながら一緒に演奏できることの幸せを味わって、その場に存在していました。

こうやって、複数のアーティストがプロジェクトに関わる時、それぞれ違ったアート観や手法で自分の立ち位置を見つけていく、そのことが面白いと思ったのです。その存在の仕方、関わり方が、自然とそれぞれのアーティストの哲学を反映している。だから、「歌の住む家」の公演でも、きっと、ウイリアムさん、中ムラさん、安野さんのプロジェクトへの関わり方、スタンスは全然違ってきて、それも、公演を見る上での面白さになってくるだろうなぁ、と思いました。