野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

山下残のIt is written there

京都芸術センターへ山下残のダンス作品を見に行った。
これは、6年前に伊丹のAIホールで初演された作品の再演で、観客全員に100ページから成る本が配られ、みんながページをめくりながら鑑賞するダンスです。

6年前は、本番が見られず、本番直前の通し稽古を見ました。当然、今回のように客席で一斉にめくるという状況がなかったのですが、6年前に、すごく感動したので、今回は本番を見るので、とても楽しみにしていました。

見ているうちに、あ、この作品は、2001年にぼくがピアノを弾いた「足を喰う犬」の延長上にあった作品だ、ということを思い出した。「足を喰う犬」では、しょうぎ作曲のやり方で、ダンスと音楽を作った。その後、さらに、ダンスだけで残くんが作ってきたパートがあって、それが、全部、言葉で振付の楽譜みたいになっていた。森下スタジオで公開リハーサルがあって、美術家の島袋道浩もやってきて、ああでもない、こうでもない、と意見交換をしながら、振付の言葉を書いた紙を観客に配ることにした。そうそう、あの頃、東京オペラシティアートギャラリーでの「出会い」という展覧会に、島袋とぼくは参加していて、その会場に詩人の吉増剛造さんが来て、吉増さんに、残くんの振付の言葉を見せた。だって、あれは、詩のようであったから。吉増さんが、すごく喜んでいた。

そういうことが、うわーっと、思い出されて、ああ、あの時、残くんと一緒にやったことが、今ここに生きていると思った時、ぼくも「足を喰う犬」の続きをやっておきたい、と思った。具体的に言うと、あの時のピアノで弾いていた音楽を下敷きにして、新しい作品を作れないか、ということだ。昨年、残くんの作品で演奏してもらった大田智美ちゃんに書く新曲と、それがリンクするのではないか、という気がした。