野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

変わっていく音

今日は、門仲天井ホールで、P−ブロッのコンサートでした。プログラムは、

Part1 P−ブロッ・フロム・ジャパン
Part2 イギリス実験音楽特集
Part3 変わっていく音

でした。Part1では、イギリスで連日のように演奏した曲目の中から、吉森信作曲「それぞれの植木鉢」、しばてつ作曲「Binaire」、鈴木潤作曲「本日のさんぽ」、「日本音楽メドレー」、林加奈作曲「犬が行く」をやりました。全部暗譜で何度もやっているだけあって、演奏も相当遊べるようになってきています。

Part2では、イギリスのレポートとして4曲。1曲目は、Michael Parsons作曲「Pentachodal Melody」は、数字だけの楽譜の古風な実験音楽で、本当に美しい曲です。かつてのP−ブロッでは、こういう曲もガサツな演奏しかできないので、ガサツな演奏の味を生かす解釈でしか演奏できなかったのですが、今のP−ブロッはこういう曲も演奏できるようになってきました。こうなると、10年前にやったElliott Sharpの曲なんかも、実は全然違う音楽になるのかもしれない、なんて思えてきます。いつかやってみたいです。

2曲目は、Hugh Nankivell作曲「Goat Music」。簡単なルールによる即興なのですが、曲の最後に「どんなヤギか」を相談しなければいけない曲です。この曲で感心するのは、こういう即興演奏は良い演奏、こういう演奏は悪い演奏、という判断を無効にしてしまうことです。どんな即興演奏をしようと、最後にみんなで「どんなヤギだったか」を相談することで、こういうヤギもありなんだな、ああいうヤギもありなんだな、と許されてしまうのです。これは、ヒューがアマチュアの人と音楽をする中で編み出した曲なのですが、そうした優しさを感じる曲です。

3曲目は、Peter Wiegoldがブルネル大学でやっている指揮による即興をやりました。Butch Morrisのコンダクションと似たところもありますが、指揮を突き詰めた感じではなく、ピーター自身が指揮だけでなく自分自身もキーボードを弾きます。今回は、指揮者が観客に背中を向けるのではなく、お客さんにも指揮者を見てもらうことにしました。ぼくが指揮をしましたが、今日は野村誠の音楽をするのではなく、なんちゃってピーターに徹してみました。ピーターの真似をするのも楽しいものです。

4曲目は、Bob LochwoodのKelman Groupの即興演劇を真似して、即興演奏をやってみました。今回は声は使わずに鍵ハモだけとしましたが、ケルマンらしくするには、やっぱり声を使った方が良かったかなぁ。

そして、Part3では、野村誠作曲「あたまがトンビ」をやりました。今回は、各自が音量を抑えて、音色も場面場面でできるだけ変えて演奏するように心がけました。難しい曲なのでまだまだですが、それでも、一歩前進できた感触をもって演奏できました。多分、イギリス実験音楽の人々との交流なども、P−ブロッなりに消化されて、演奏の作り方などに影響されてきていると思います。イギリスでは、野村の知人をP−ブロッが訪ねるパターンでした。今度は、別に海外でなくてもいいので、別のメンバー(例えば、吉森くん)の知人の音楽家をP−ブロッのメンバーが訪ねていって交流するとか、そういうことをしていくと、また、違った音楽の深みにたどりつける気がします。

アンコールは、ボサノバ風の「赤とんぼ」。これで終わりと思ったけれど、再度アンコールがきて、「All blues」をやりました。

次回のP−ブロッの自主公演は、6月17日(日)15時@門仲天井ホールで、テーマはP−ブロッのメンバーが野村誠をいじる企画です。野村誠が作曲したり、構成・演出などをしたりすることは多いのですが、野村誠にプロデュースさせずに、あくまで演奏家パフォーマーとしての野村誠にフォーカスを当てます。ぼくはP−ブロッメンバーの指示に言いなりになって演じるという企画です。ドキドキです。

それから、イギリスツアーを終えて、今日のライブを終えて、今後のP−ブロッですが、メンバーみんなで話し合ったところ、まずは「精緻なアンサンブル」を目標に、練習をしたい、ということになりました。ですから、しばらくは、ライブの予定に関わらず、練習をしていこうと思っています。今までやった曲の中からピックアップして、丁寧に演奏を作っていきたい。どこかからCDが出る予定はありませんが(誰か興味を持ってくれそうなレーベルとかご存知ならば、是非紹介してください)、自分たちでそうしたレパートリーをレコーディングしたりして、CDーRでもいいので、形にしたりしたい。そんな話になっています。P−ブロッ、どんどんライブなどやっていきたいので、色々お誘いください。