野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

キッチンガムラン、エンディング曲

で、12時入りで収録は終わったのが20時すぎ。でも、荒井さんの絵が完成する瞬間に立ち合わないのはありえないと思い、最後までいる決意。尾引さんも残った。多くのスタッフがいなくなって静かになったスタジオで、荒井さんとアシスタントの人々は絵を描き続ける。そして、ぼくと尾引さんはそこで作曲をすることにした。鍋やボウルを時間をかけて丁寧に音色で選び、音を出しているうちに、自然と曲が生まれてきた。「キッチンガムラン」。ぼくと尾引さんの二人しかいないので、ディレクターの高橋さん、デスクの堤さんにもエイちゃん、ルリアちゃんのパートをやってもらった。これにぼくが鍵ハモで笙のように入り、尾引さんのホーメイが入った。ボウルがインドネシアガムラン風だから、北のトゥバ、日本、そして東南アジアのガムランとアジアを縦に縦断するような神秘的で美しい音楽になった。荒井さんのライブペインティングの場で曲を作れて、それが第1回目の曲で、ぼくは本当に嬉しかった。

ところが、それでも荒井さんの作業は終わらない。10時を過ぎても、まだ終わらない。待っているうちに、鍵ハモで即興演奏をしたり、尾引さんとストレッチをして体を伸ばしたりして、そして、11時を回って、ぼくは尾引さんに「番組のエンディング曲を作ります?」と言った。でも、疲れてるし、これ以上、無理してやることもないのかな?しばらくすると、尾引さんは楽屋からイギルを持って現れた。エンディング曲を作るんだな、と思った。ぼくも鍵ハモを取り出し、イギルのチューニングをしながら、何の打ち合わせもなく、エンディング曲の作曲が始まった。いや、演奏し始めた瞬間に作曲は完了していたのだ。ぼくらは、あまりにも自然に、その曲を演奏し始めた。遥か以前から知っていた曲であるかのように。荒井さんのライブペインティングの一日が終わろうとしている時に、番組のエンディング曲が生まれた。そして、このエンディング曲が流れる時に、画面には荒井さんの絵が映っていることだろう。こんなエンディングが待ってるなんて、わからなかった。

荒井さん、尾引さん、関係者の皆さん。お疲れ様でした。