野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ソロへ

今日は、ソロへ行く。
朝起きて出かけようと思ったら、インドネシアに留学中のミオさんとダラダラ喋っているうちに2時間くらい過ぎちゃった。みおさんが、「ソロに一緒に行ってもいいですか?」と言ってくれたおかげで、出発できる。
電車の駅に行ったら、2時間先まで電車がないので、時間をつぶし、ソロに着いた後も色々トラブルありながらも、プラプトさんの家に到着。
樅山さんに紹介してもらったプラプトさんは、瞑想する身体芸術家。家の向かいに驚くべき庭というか、これ自体がアート作品で野外劇場と呼んでいいような広大な場所を持っている。そこで、ぼくが鍵盤ハーモニカを吹き始めると、たった一音聴いただけで、「君は、もっと長くソロにいるべきだ」と言って、お経のようなことを唱えながら、踊り始めた。この即興は、かなりいいものだった。演奏中に、ぼくの背後に何かが来たような感触があった。
その後、演奏しながら、ぼくは自分の内にぐっと向かって、ふと気づいて外に向かった瞬間に、プラプトさんは、「じゃあ、しばらくここで遊んでいてね。」と言い残して、家に戻って行った。この人、かなり分かってると、ぼくは感心。
さて、今日はプラプトさんが中心になってやっているマーケットでのアートフェスティバルの前夜祭だ。ぼくはいきなり出演することになった。会場には、樅山さんに紹介された作曲家のヤスダーもいる。ヤスダーは人当たりの良い人で、トラックの荷台にシンセサイザーや、アンクルンやら竹の楽器を乗せていた。
マーケットにゴザを敷いて、簡単な照明とPA。前夜祭の最初に、お祈り。続いて、食事を振る舞い。開会の挨拶。と思ったら、1番目の演目で、名前が呼ばれて、プラプトさんとぼく、それにダイアン、セリーヌの二人のダンサーが加わった。プラプトさんは、庭の時の方が冴えていたように感じた。演奏はうまくいったと思う。
そしたら、次の演目のダンサーが、演奏してくれと頼んできたので、次の演目も演奏。その後、フルートとギターとパーカッションの軽音楽、ワヤンべべという紙芝居やジャワ舞踊を天才少年がやって、続いて、ガムラン音楽に合わせて女装したダンサーが踊って笑いをとったり。そして、最後にヤスダーの不思議なバンドの登場。これが、ねらってもできない見事なダサさを醸し出していた。ヤスダーにも、演奏に加わるように言われたので、竹の棒を持って踊ってたら、プラプトさんが鍵盤ハーモニカでやってよ、と目で合図してきたので、鍵盤ハーモニカでも演奏。
偶然、小林さんに会った。ソロに留学して、ガムランを勉強している。ぼくの「路上日記」に出てきて、一度だけ一緒に路上演奏をしたことがある人。当時は東京芸大音楽学を勉強する学生だった。このフェスティバルを見に来て、偶然出会った。7年ぶりか8年ぶりくらい。今日みたいなフェスティバルって、よくあるのかと思ったら、小林さん曰く「2年間住んでいて、でも、こんなのは初めて」とのこと。たった一日だけ来て、それが体験できて、しかも一緒に共演もできて、ラッキー。
すると、またまたラッキーなことがあった。今日は1ヶ月に一度、王宮のガムランのラジオ公開録音がある日らしい。うまくできてる。フェスティバルが終わった時間がちょうど10時。公開録音の演奏が10時から12時。ちょうどいいから、聴きに行った。聴くと言うより浴びた。耳で聞くより、皮膚で聞くのがいい。
プラプトさんの紹介で、芸大の脇にあるアートセンターの寮に宿泊。
すべてがうまくできすぎな展開だけど、銀座で樅山さんと会った時から、きっとこうなる気はしてた。やっぱりそうだった。