野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

正倉院のち梅津さん

奈良国立博物館正倉院展を見に行きました。8世紀の音楽を聴くなど無理ですが、8世紀の楽器が保管されている正倉院の存在自体が奇跡のようです。楽器としては、鉄の板をぶら下げて鳴らす鉄琴や、パンパイプ、琵琶などが見られました。

全体的に、台湾の故宮博物館で見たものとテイストが似ています。大仏開眼会などの頃、大陸から渡ってきたものを、いろいろ宝物として保管していた結果、こうなるのだなぁと思いました。

昨夜、ふとfacebookを開いたところ、梅津和時さんの「こまっちゃクレズマ」のライブが京都であることを知り、奈良からの帰り道に、駆けつけました。本当に素晴らしいライブで、行って良かった。

感情がそのまま音になったソロの後に、梅津さんが熱唱された「東北」という歌の力。震災も原発事故も何も終わっていないのに、それを忘れていこうとする流れがある。何も終わっていないから、忘れさせないように歌い、訴える。でも、しんどいことや辛いことは、忘れて日常を送りたい気持ちがある。しんどいことに向き合えるだけの精神力を持つためにも、思いっきり楽しんで、思いっきり遊んで、思いっきり笑うことが要る。ずっと終わらないし、終われない現実に向き合うために、ずっと続く非常事態を生き抜き、ぼくたちの力で世界を変えていくために、ぼくたちは無心になって笑い、遊び、踊り、歌い、そして、考え、行動するのだ。まさに、「こまっちゃクレズマ」の中には、その全てがあった。ぼくは、そこに希望と勇気を感じました。

実は、梅津さんに、「千住だじゃれ音楽祭」の出演をお願いしていたのですが、スケジュールが合わず実現しませんでした。梅津さんの音は素晴らしいので、野村誠が梅津さんの音と交わる場を作りたいです。