野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ピアノのレコーディングしました

昨日と今日と二日間、ピアノソロのCDのためのレコーディングをしました。

福岡の小山冴子さんが主宰するとんつーレコードから、発売になります。
http://03150.net/tontuu/

ジャケットを担当する美術家の島袋道浩君も、レコーディングに来て、音の生まれる瞬間に立ち合ってくれました。まるで妻が子どもを出産するのを見守る夫のように、島袋くん、小山さんが立ち合ってくれたことで、このアルバムができるのだなぁ、と思います。

http://www.shimabuku.net/

会場は、滋賀県にあるピアノの音の実験場「Stimmer Saal」で、フルコンのピアノを、調律師(いや、調律狂人と言うべきか)の上野泰永さんの調律で、薮公美子さんの録音で録りました。
http://www.stimmersaal.com/


これが、壮絶なレコーディングでした。

今回のレコーディングでは、1000人のホールでも使えるようなフルコンのピアノを、80人規模の小さなホールで弾くだけで贅沢なのに、さらには、マイクはピアノの近接マイクのみに限定して、録音しました。ペダルの上がり下がりする音など、普通で言う雑音まで含めて、ピアノの発する音をクリアに録ることにしたのです。いわば、毛穴が見える至近距離で、ノーメイクの素顔を見られてしまうような録音です。その上に、さらに上野さんがピアノの反応を極限まで敏感に調整してくれました。その結果、本当に今まで聞いたこともないような見事なピアノの音色が見事に録音されて、そのことは素晴らしいのですが、同時に、こちらが演奏の技術の拙さなど、全部目立つのです。これは、過酷です。

ぼくのピアノは、決して巧くない。拙い演奏技術です。そのことを隠して、できるだけ粗が目立たないようにCDを作ることもできるのに、もっともらしいコンセプトを隠れ蓑に、自分の限界を隠すこともできたのに、どうして、ぼくは、等身大の自分の限界を曝け出して、こんな真っ向勝負に出ることにしてしまったのでしょう?

この過酷な環境で、本当に気持ちよく2日間のレコーディングをさせていただきました。できあがったCDは、野村誠ピアノ作品集というよりは、野村誠の声がそのまま入っているようなそんな音楽になりました。

夏くらいには発売できるかな。みなさま、お楽しみに。