今日のライブは、ぼくの人生の中でも最も印象に残ったコンサートになるかもしれない、そんな一夜でした。今日、一日は、本当に、特別な体験でした。
日本から、P−ブロッの吉森信くんが到着し、西ジャワのバンドゥンまで電車で8時間かけて、やってきました。吉森、ギギー、やぶ、ぼくの4人でのコンサートをするためです。
そもそも、朝、Selasar Sunaryo Art Spaceに行って、Dodong Kodirさんに会ったことが、まず第1の衝撃。リサイクルの物で作った楽器と聞いていて、ある程度イメージしていたのですが、これらの楽器が予想以上に視覚的にも面白い上に、音がよく、ドドンさん自体が、とても面白い。いきなり、ワクワクして、その場で即興セッションが始まりました。しかし、これは序の口でした。
ドドンさんの作品は、ここでも見れます。
http://www.selasarsunaryo.com/component/content/article/32-programs-2011/221-selasar-kids-program-2011.html
このアートセンターの創始者で館長で、インドネシアの現代美術家の大御所であるSelasar Sunaryoさんにお会いしまして、この人がとても良い人柄の人でした。しかも、ワークショップに参加した子どもたちに配る賞状(ワークショップに参加したことをここに証します、的な)に、一枚ずつサインをしていました。ああ、ワークショップに参加して、著名な芸術家から賞状をもらえるなんて、きっと子どもたちは嬉しいだろうなぁ。
http://www.selasarsunaryo.com/
で、スナリヨさんの作品が常設展示されているので、常設展を見に行ったところ、自ら展示を解説して回ってくれました。この作品が、本当に素晴らしかった。絵画も彫刻もミクストメディアもインスタレーションも、何でもやっちゃうところは、さすがインドネシア人。しかも、この建物自体の設計まで、自分でデザインしたというのです。しかも、作品が全てとても良いのです。このこと自体が第2の衝撃。
すると、スナリヨさんが、ご自身のスタジオに連れていきたいとおっしゃって、連れていってもらうことに。私費でアートセンターを作り、これだけの巨大なアトリエを持っていて、多分、ぼくが人生で出会った中では、最もお金持ちな人だと思うので、お手伝いさんなども、がんがんに雇って、自分でしなくて良いとも思うのですが、お茶も、ぼくらのような若造に自ら注いでくれました。そして、このお庭が、本当に素敵な空間で、大きなインスピレーションを得ました。このことは、コンサートに大きな影響を与えたことでしょう。もうすぐ、娘さんの婚約パーティーを開催する予定というスタジオには、ご自身の作品が何点も飾ってありました。なんでも、それぞれの作品は、結婚生活へのアドバイスを語るために、選ばれていて、その絵を前にしながら、若き二人にスピーチをするのだ、と言っていました。この体験が、第3のインパクト。
そして、国際交流基金ジャカルタオフィスのスタッフの方が、ジャカルタから来て下さりましたが、この人が、妻と以前アラブ音楽の発表会で共演したことがある人で、なんと5年ぶりの再会。偶然なのですが、何かに導かれるかのような再会の興奮に驚き、これが第4の事件。
そして、その後、会場に戻り、サウンドチェック、子どもたちとのリハーサル、新聞の取材などを経て、本番。
1)ワークショップの子どもたちの演奏 を指揮し、
2)ドドンさんの手作り楽器バンドの演奏が、大盛り上がりし、
3)我々4人の演奏は、さらに、大歓声で迎えられ
4)最後の全員のセッションには、飛び入りで子どもも加わり、最高潮に盛り上がりました。
そして、アンコール。もはや、何をやっても盛り上がる空気ができあがっていたのですが、ぼくは、途中から歌いだしました。
「スナリョさん、ドドンさん、スナリョさん、ドドンさん、ドンドンドンドンドンドドドン」
ただただ、お二人への経緯を込めて歌ったのです。すると、なんと、インドネシアの現代美術の大御所で、物静かなスナリョさんが、いてもたてもいられず、ステージに飛び出し、一緒になって踊りながら、歌い始め、ついに、曲が終わると、
「Makoto Hidup」
と叫びました。Hidupとは、生きるとか、人生とか、ライブとか、万歳とか、そういう意味の言葉です。これが、今日の5つ目の驚き。
そして、最後の驚きは、ほとんど全ての観客が次々にやってきて、握手を求めた上に、記念撮影を望み、これが、延々、全員が帰るまで続きました。バンドゥンの人は、ジョグジャの人ほどシャイじゃないようです。
本当に、貴重な体験をしました。残り2週間でインドネシアを旅立ちますが、本当に大きなお土産をいただきました。日本に帰って、日本の仲間たちと一緒に、国を建て直していく勇気を、いっぱいもらったと思っています。
そんなバンドゥンでの時間でした。