野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

芸大の卒業試験にて〜新世代のガムラン作曲家

 ジョグジャの芸大に、伝統音楽科の卒業試験を聞きに行きました。21歳のAgustinus Welly Hendratmoko君は、伝統音楽科の卒業試験では珍しく作曲を発表しました。作品は、伝統の編成とは無縁で、西洋のフルート、ガンバン(木琴)2台+シトゥル(琴)とスリン(笛)の持ち替え、クンダン(太鼓)とルバブ(胡弓)とマラカスの持ち替え、グンデル(共鳴筒のある鉄琴)とクントンガン(木のくり抜き太鼓)、スレンテム(共鳴筒のある鉄琴)とシトゥルの持ち替え、といった感じの6重奏。伝統学科の卒業試験なので、もう少し伝統的な感じかと想定しましたが、実際は、7拍子や5拍子などが多様され(伝統音楽は基本的に全て4拍子)、ガムラン楽器なのに、音楽の形態としてはプログレやポスト・ミニマル音楽に近い感性の作品で、そうした音楽が機械的なリズム感で演奏されるのではなく、繊細なタッチで演奏されていく、とても良いものでした。
 ジョグジャカルタの伝統音楽科は保守的で、あまり作曲など実験的な活動は珍しい、と聞いていたので、こんな作品を作る新しい世代の作曲家が出てきているとは、予想しておらず、質の高さに驚きました。実際、ウェリー君は、西洋音楽科の作曲の学生だったギギー君とも親しく、若手作曲家のグループで一緒に活動しているらしいのです。こうした人材が一人いるということは、潜在的に面白い若手が出てくる可能性が高そうで、ちょっと要注目です。

 げんぱつやめます
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