野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

でもワニバレエ〜羊飼いの家で

今日は、林加奈ちゃんと中村未来子ちゃんと3人で、美術家井上信太くんのお宅を訪ねた。とにかく、素敵な家で、古い大きな家で、居心地がいいです。お昼前に到着して、息子のりんくんが眠るまでいました。途中、りんくんの部屋で、レゴブロックや積み木で遊んでいたら、どっちも音がすごくいいので、あいのての番組がそれぞれ1回作れちゃうな、と思った。

一番の用事は、秋に栗東のホール「さきら」で行う信太くんの舞台の相談です。美術家ですが、本人には平面作家の意識が非常に強い人で、平面作品だけが舞台にあがって、人は一切出てこない、そんな舞台作品をやれる人がいるとすれば、彼以外にはいない、そういう人です。これだけ、平面ということにこだわって、うわごとのように「平面」「平面」と言い続けている人は、他に会ったことがありません。話をしているうちに、ぼくや色んな人が舞台に上がったりするよりも、ぼくは彼の舞台に立ち合わせてもらおうにしても、舞台上には平面作品しかないような、そんな舞台がいいように思いました。または、舞台上の主人公は平面作品ですから、それを引き立てるために出演者が存在してもいいのかもしれませんが。

シンタ夫人のトモコさんは、15年前に知り合った時から、助川さんとして知っていた人で、1991年のあひるが丘保育園での伝説の場面の目撃者であり、それをビデオに撮影してくれた人でもあります。ついつい助川さんと呼んでしまいますが、台所に貼ってあった写真に、rin & tomokoと書いてあったし、徐々に呼び方を変えられるように努力します。

ここのお宅では、親子3人でワニバレエ踊りまくっているみたいです。その話を聞いて、この二人が和太鼓で世界中をツアーしているころ、久しぶりに日本で会った時のテンションが、何故だかふっと思い出されました。「でもワニバレエ」と言って弾ければいいのです。どんな事情があろうと、美術をやってても何でか分からないけど、ヘトヘトになりながら太鼓を叩いて世界を周っている。これって、まさしく「でも、ワニバレエ」。開き直りというか、悩まぬものの強さというか、すごいエネルギーで突っ走ればいい、って感じ。

そっか、「でも」という言葉を挟んで論理を飛躍して、突っ走っちゃえばいいんだ。そして、この「でも」という飛躍こそが、ぼくたち芸術家が踏み出せる大きな大きな一歩なんだ。今日は、そのことを再認識させられました。

でもワニバレエ