野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

作品をつくること

昨日の「音の城」の打ち上げの後も、なんだか興奮して眠れなかったので、寝床に入ったのは明け方。今日は思いっきり眠ろうと思った。

目が覚めたのは15時ごろ。
友人が訪ねて来て、10分だけ話を聞いてくれる時間をくださいって言う。自分は野村誠を尊敬している、来年、人生で初めて個展をする、その会場で1曲だけ私のために演奏して欲しい、というのが、話の内容だった。すがすがしいお願いで、さすが、ぼくの友人だ、と嬉しく思った。昨日の打ち上げで散々話題になったことだけど、愛のある依頼は、本当にうれしい。

今日は一日ごろごろしていた。来客も何人もあったけど、ごろごろして応対した。こんな日もあってもいいや。

昨日の打ち上げでぼくが言った台詞に、「かっこ悪い人になる」とか「ごめんなさいと謝る覚悟」とかがある。新しい作品を構想するときは、夢も希望も膨らむ。そして、実際に作品を作っていくとき、ぼくはいつも自分の才能のなさ、能力のなさ、にはっきり向き合うことになる。それが現実を見ることだと思うし、そうやって自分の実力を思い知った上でないと、作品は作れない。思い知った上で、精一杯の作品を作るのだ。

他人の作品を批判している時は、いくらでもカッコイイことを言っていられるし、自分の実力を精一杯出し切らない作品を発表するなら、カッコイイことを言っていられる。でも、自分の実力を精一杯注ぎ込んだ上で、ぼくの現在作れる最高の作品はこれだ、って言い切るのは、本当に「あの人は才能ないね」「あの人はダメだね」と言われる危険性に立ち向かうことだ。で、ぼくは、みんなに軽蔑されようと、世界中のほとんどの人から最低と言われようと、ぼくだけはぼくの音楽を応援する!ぼくは、カッコイイ人でいなくていいから、自分のやりたい音楽をやりたい。

でも、やっぱり人から褒められたら嬉しいし、批判されたり軽蔑されるのはつらいし、無視されると注目して欲しくなる。心は揺らぎますよ!!
けれど、自分のやりたい方向を見失わずにやり続けていくのが、ぼくの仕事だ。

あと全力を尽くしてやって、自分のやったことに責任を持ちたい。今の自分の実力で最善を尽くした結果、ここまでしかできなかったなら、「今のぼくには、これが精一杯です。ごめんなさい。」と言い切ることもできる。でも、精一杯やってなければ、それすらも言えない消化不良になる。だから、納得いくまでやりたいものです。

なんて、ごろごろしながら考えていました。