野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

クリエイティブインクルージョン横浜

横浜でのクリエイティブ・インクルージョンという助成金の審査員をしておりまして、採択された4つの事業の中間報告のヒアリング(+こちらで可能なアドバイスや相談など)のために、4団体の拠点を他の審査員とともに巡りました。

寿町で、日雇い労働者の方々への炊き出しの場などに出向き、ファッションデザイナーの視点から交流を通して、ファッションブランドの発信をしようというスタジオニブロールの試み。少しずつ関係作りをして、そこから実際に服のデザインができあがってくる地道な試み。写真集やファッションショー、展覧会などにつながるには、まだまだ時間がかかると思いますが、服が変われば町が変わる、人が変わるとも思いますし、人や町によって、服が変わっていく、そんな可能性を感じました。そして、アーティストのエゴを押し付けたくないという感覚、しかし、対話の中で創作するとしても、その中にアーティストの妄想の力は、やはり大きなウエイトを占めるだろうことも確信しました。

様々な障害のある人のニーズに即したインクルーシヴなプロダクト・デザインを探求するために、テクノロジーのデザイナーとユーザーを結びつける勉強会、ワークショップを展開中のMADE。実際に、文字が歪んで見える障害がある人が、実際にパソコンを使う時に、どんな機能があれば使いやすいのか、など実情に即したエピソードが、目から鱗のことが多く、そして、こうした声が届けられる貴重な機会の必要性も、痛感しました。

黄金町にレジデンス中のアーティストの作品制作の際に出る廃材などを活用し、子どもたちが自由に工作、創作できる秘密基地のような空間を創出する黄金町BASE。想定以上に多くの子どもたちが集うようになったことなど、学校でも塾でも公共機関でもないこうしたアーティスト主体の子どもが集える場にニーズが大きいということが、明らかになりました。そのことで、黄金町のアーティスト、地域住民、学校関係者などで話し合う機会も生まれたようです。

様々な国籍の子どもたちが集い、日用品、創作楽器を加えた即興セッションを重ねて交流し、そこからドキュメンタリー映画をつくり、映画館での上映を目論むART LAB OVA。移民の子どもたちが、言葉を介さずに、楽器でセッションしていくことでの交流は、映像でも十分面白く、子どもたちが次々に色々発見していく。ワークショップに参加している外国人の子どもたちが食事をきちんととれていないなどの事情の報告。そうした栄養の不足する食生活から、子どもたちがキレルこととの関連性などの言及もあり。色々な課題や問題も見えてくるので、映画製作を通して見えてきた様々な問題も、また何らかの形でシェアできる場がつくれればよいのだろう、と思いました。

それぞれ、決して多くない助成金額の中、非常に地道な活動を続けておられることには、本当に敬意を表さずにはいられません。