野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

新しい伝統音楽 その1

 今日から、「トゥンビ音楽祭2011」が始まりました。フェスティバルの今年のテーマは、「新しい伝統音楽」。伝統音楽にどうやって新しい要素を導入していくか?をテーマにしています。クロンチョン(オランダ植民地時代に生まれたインドネシアのポップス)は、歌、フルート、ヴァイオリン、ギター、チャック(ウクレレみたいな楽器)、チュック(ウクレレみたいな楽器)、チェロ、ウッドベースという編成で、8人中6人が弦楽器で、6人のうち弓を使って演奏するのはヴァイオリンだけ。あとは、弾いて演奏。クロンチョンの生演奏は96年以来15年ぶりに聞きますが、このリズムの重なり具合、まるでガムランのようですね。
 その他、パプアの音楽とか、インドネシアの色々なところの音楽があって、どれも違って個性的で本当に面白い。ジョグジャカルタは、中部ジャワにある古都で、王宮に伝わるガムラン音楽が、現代にも残っているのですが、それと同時に、インドネシア各地から移り住んでいる人がいる多民族が混在している都市なのです。スマトラの人と、パプアの人と、バリの人と、カリマンタンの人と、、、、それぞれ全く違った文化を持っていて、でも、インドネシア語という共通語を介してジョグジャで暮らしています。
 最後に登場したメメットさんのバンド「ガンサデワ」は、だから、インドネシアの様々な民族楽器が混在するバンドです。現代のインドネシア音楽をどうやって作ろうかと、彼なりに模索しているのだと思います。「ガンサデワ」は、たった3曲しかやらないのに、ベースの人は、ウッドベースエレキベースとチューバを持ち替える。一人で3つの楽器をやるということは、3つの楽器を持って来たということです。たった3曲のために。メメットさんも、フルートや、インドネシアの笛や、ティンホイッスルや、チャルメラみたいな楽器などを持って来て持ち替え。石だけに限定して音楽をやったりするメメットさんですが、最小限に限定するタイプではないみたいですね。
 で、3曲やる3曲目に、メメットさんの指示による演出で、客席から鍵ハモを吹きながら登場して(やぶくみこは、ダルブッカを叩きながら登場し)、共演させていただきました。南国の野外劇場で、月や南十字星ケンタウルスが見える夜空の下で演奏するのは、本当に心地よいものです。人々の笑顔が印象的でした。