野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

青森の「吃驚」展を体験する

国際芸術センター青森にて、アーティスト・イン・レジデンスに参加の5作家の作品を鑑賞しました。

Angie Atmadjajaのインスタレーションは、非常に良かった。会場の片隅に設置された1個のスピーカーから、持続する音(定常波)がずーっと鳴っている。会場は、壁も床も真っ白。一音で真っ白の世界が広がる(この日の青森は雪景色ではありませんでしたが)。一見すると、それだけです。

そして、会場に足を踏み入れると、人によってはすぐ気づきませんが、歩くと、微妙に音量が変わります。そして、時に、劇的に音が聞こえなくなるポイントがあります。そして、平坦だと思った床も、実は微かに傾斜があって、劇的に聞こえなくなるポイントが一番低くなるように、床が作られています。

観客は、自分なりのスピードで歩きたいように歩いたり、立ち止まったりすれば、56.7ヘルツの音による音量が変化する音楽を、自分なりに作曲することができます。

この作品は、独特な形状をし、残響の長い安藤忠雄の建築と、とても良いコラボレートになっていました。

あと、山本聖子作品も非常に、美しかったです。何が良いかというと、質感と大きさ。この作品は、非常に巨大なのですが、巨大なものというのは、概して、強い素材で作られているものですが、この作品の素材は、非常に細かく薄く弱いので、その弱さと大きさのバランスが、光と組み合わさって、独特な美しさを醸し出していました。

実際に種明かしをすれば、マンションなどの広告の部屋の間取り図を、丹念に切り抜いて、組み合わせて、作ったものらしいのですが、そうした背景は別にして、美しかった。

津田道子さんの作品は、舞台セットのような作品なので、ここで、音楽家が音楽を奏でるならば、どのように登場したり、どのように動き、それが音楽にどのような影響を与えるだろう、ということを思った。