野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

江戸時代の木琴ブーム

野村誠×北斎トークセッションの2日目。中溝一恵さん(国立音大専任講師)をゲストにお招きし、江戸時代の木琴を巡ってのトーク。昨日は北斎に深く入り込んだ一日。今日は江戸時代の木琴について深く入り込んだ一日でした。

1793年〜97年ごろに書かれた松平定信「退閑雑記」の中に

「木琴てふいうものあり、紅毛のつれ来る俗に黒坊といふものゝ、つくりてならす器なり、かたち船の如き箱にして、チャンといふ木の拍子木ほどしたるを十八並べたり、其木厚薄あり、みなうちの方をけづりて、その厚薄によて音をわかつ、槌のごときものありてその木をうつに、十八の数々、みな音たがへり、此製をなすに、日本にては、さは栗といふ木をもてつくれば、おと出るともいふ、(以下略)」

という記述などあり、18世紀末には、既に日本に木琴はあった。1804年に初演された「天竺徳兵衛韓噺」という歌舞伎の中で、木琴が初登場後は、頻繁に木琴は、登場してきて、小説の表紙などにも、木琴が描かれたりしていた。

川の上で花火を楽しむ船の絵の中にも、木琴と三味線が描かれていたりする。

木琴に描かれた謎の横棒を巡っての議論が面白い。これについては、客席からも数々のアイディアが出た。

1800年頃、オランダ経由で、インドネシアのガンバンらしき木琴が日本に伝わり、しかし、日本でブームとなり、真似て木琴を創ったりもしたかもしれない。しかし、木琴の家元などは生まれていないので、木琴の名手などは生まれなかったのかもしれない。それは、一体、なぜなのか?これらの木琴は、どれくらい突拍子もない音をしたのか?そんな突拍子もない楽器とどうやって合奏をしたのか?どれくらい気楽な感じでセッションをしていたのか?木琴の桴は、湾曲していたのか?湾曲していると、何かいい音がするのか?木琴の横棒にどんな意味があったのか?想像力をかき立てられることがいっぱいです。

12月23日には、現在も歌舞伎で使っている木琴が(湾曲している桴とともに)数台やってきます。どんな突拍子もない音がするのか?どんな音楽があり得るのか?そういったことを想像していくイベントとして、ますます面白いことになりそうです。12月にはインドネシアにも行くので、いろいろ調べて来ようと思います。

先行研究としては肥田皓三「木琴ものがたりー江戸時代の木琴」などがあるようです。

みなさん2日間お疲れさまでした。ご来場いただいた皆さん、ありがとうございました。