野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「あいのて」の特長

朝、教育テレビをつけたら、「音楽のちから」という番組がやっていた。全部は見なかったので、分からないけど、途中で、水島一江さんが出て、ストリングラフィーの演奏をしていたり、巻上公一さんが口琴をやったり、竹内さんがテルミンをやったり、青島広志さんが小学生に解説をしていたり、オーケストラが出てきて演奏していたりしていた。

この番組を見ていて、出演者はいろいろ豪華なのだけど、物足りないなあ、と漠然と思いました。何が物足りないのか考えることで、「あいのて」の特長をどうやって出せばいいのか、を考えました。

この「音楽のちから」という番組は、徹底的に辞書っぽかったのです。「口琴」という字幕が出て、そして、巻上さんが口琴を演奏する。これは、言ってみれば、「ヴァイオリン」という字幕が出た後に、ヴァイオリンの演奏がある、というタイプの楽器の名称の説明が、ただ口琴テルミンなどに広がっただけで、知識としての音楽、名称を覚えるに留まるな、と思ったのです。口琴という楽器の名前を知識として覚えることではなく、口琴という楽器で巻上公一というアーティストが何を追求しているのかを、少しでも垣間見ることができれば、とぼくは思います。知識としての音楽ではなく、音(音楽)を味わうこと。だから、口琴という楽器の名称を覚えることよりも、歯ブラシを磨きながら口の形を変えて倍音の変化を楽しむことの方が、よっぽど口琴の音楽の本質に近づくのではないか、そう考えます。

もう一つ感じたのは、この番組で出てきた音楽に、コミュニケーションを感じなかったことです。「あいのて」では、番組名からも分かるように、「あいのてを入れる」=コミュニケーションを重要視しています。音楽というのは、作曲家と演奏家のコミュニケーションだったり、指揮者と演奏家とのコミュニケーションだったり、演奏家と観客のコミュニケーションだったり、演奏家と楽器とのコミュニケーションだったり、楽器と空気とのコミュニケーションだったり、音と空間とのコミュニケーションだったり、調律師とピアニストのコミュニケーションだったり、・・・・。そういう意味で、「あいのて」では、これから、もっと「コミュニケーション」の部分をうまく見せていくことができたらな、と思います。

それと、コミュニケーションに関して言うと、関西人の言うところのボケとツッコミが、もう少し、「あいのて」の中で出せたらな、と思いました。というのは、片岡祐介さんは、すごいボケの天才です。ぼくは、いつもツッコミをする羽目に陥りますが、「あいのて」では、言葉でのツッコミができないのです。音でツッコムしかありませんが、今のところまだ音でのツッコミ技術がないので、これからがんばります。でも、永依ちゃん、瑠璃亜ちゃんに、番組の中で、言葉でドンドン突っ込んでもらってもいいのかも。そうすると、片岡さんのキャラも際立つし。

ということで、音を味わう、これに関しては、尾引さんを中核に、とことんこだわりの倍音(音色)を探求する姿を提示していく。で、片岡さんは、音でボケを追求し、野村は、音でツッコミを入れれるようになり、女の子2人も、こうした音でのコミュニケーションに加わりつつ、言葉でもツッコミを入れれるようになっていく。

とにかく、ぼくらがやっていくべきことが、より明確に自覚できたので、「音楽のちから」を見れてよかったです。そして、「あいのて」をやっているぼくらは、本当に音楽の力を信じているからこそ、知識としての音楽ではなく、音楽の本質を伝える番組づくりを目指します。