野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

砂連尾さんの絵画

今までは京都でリハーサルをしておりましたが、本日より伊丹のアイホールにて「砂連尾÷野村誠」のリハーサルが開始しました。

ロビーでは、砂連尾さんの絵画(約1000点)の展示作業が行われております。

公演まであと4日。当日パンフのための文章を書きました。

老人ホームREMIX #2ドキュメンタリー・オペラ「復興ダンゴ」

東日本大震災津波原発事故を引き起こし、放射能が日本中を汚染した。被曝の渦中で、ぼくらは新たな生き方の模索を強いられた。一人のアーティストとして、この状況に何ができるだろう?あまりの被害の大きさに、無力感ばかりが先走る。でも、ぼくにできることは、音楽を作ることでしかない。ぼくは悩みに悩んだ末、戦争を経験したお年寄りの言葉を題材に舞台を作ろうと決意した。戦後の復興の中に、何かぼくらにとって参考になるヒントがあると直感したからだ。

情報が氾濫しネット上で様々な言葉が飛び交う。原発放射能に関しても、様々な情報が飛び交った。有益な情報、混乱を招く情報、情報の取捨選択にも苦労した。このままでは情報に翻弄されてしまうのでは、という危惧もあった。そんな中、ふと、この東日本大震災からの復興について、戦後の復興を知るお年寄り達はどう思っているのだろう?と思った。しかし、老人ホームのお年寄りが語る言葉に辿り着くためには、直接会ってお話を聞くしか手段はない。震災から半年後、ぼくらは「老人ホーム・REMIX #2」を作るべく、特別養護老人ホーム「さくら苑」を訪れた。「東北で大きな地震があって、原発事故があって、どうしたらいいのだろう?」と。

お年寄り達は、親身になって考えて下さった。お年寄り達との会話は、楽しい時間だったが、そこで何か明確な結論が語られたわけではない。通常のドキュメンタリー作家ならば、何度も何度も取材を重ね、重大な証言を聞き出すまで取材を続けたかもしれない。しかし、ぼくが選んだアプローチはその逆だった。雑談のような時間の中に、全ての真実がある、大切なメッセージが隠れているはずだ、と考えた。だから、お年寄りとの取材は最低限に留め、その代わり、そこから大切なメッセージを読み解く作業に膨大な時間を注いだ。お年寄りの言葉はもちろんのこと、声色、表情、仕草の中に隠れている大切なメッセージを探した。上田謙太郎さんの映像、杉本文さんの写真、吉野さつきさんとの対話、そして砂連尾理さんの身体。それらを介して、老人達のメッセージから、詩/旋律/舞踊が表れてきた。ああ、音楽だ。音楽がやってきた。暗号を解読していった先に出会った音楽は、生きる希望でもあった。お年寄り達の言葉にならない声に、ぼくらは耳をすました。

タイトルは、企画書の段階では「復興」だったが、お年寄りの取材で、戦後のタンゴブームを知り、「復興タンゴ」と変わり、ついにはタンゴと団子をかけた駄洒落から「復興ダンゴ」になった。映像・音楽・ダンス、写真・音楽・ダンスという三色ダンゴのドキュメンタリー・オペラを、どうぞお楽しみ下さい。(野村誠






老人ホーム・REMIX #2 ドキュメンタリー・オペラ “復興ダンゴ”

1 序曲 Overture
2 こわかった I was scared
3 古代民謡 Ancient melody
4 若かったのよ I was young
5 プリーズリメンバーミー Please remember me
6 アメリカ America
7 古代民謡2 Ancient melody 2
8 間奏曲 Interlude
9 理髪の方です He was a barbar
10 ダンゴの女王 The queen of dango
11 立ち止まる Stop to think
12 指は舞う Fingers dance
13 ベル Bells
14 声 Voices
15 フィナーレ Finale


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