野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ジャズピアニストの癖

先日、大阪のコスモス事務所で、ジャズの楽譜があったので、譜面を弾いていました。ところが、譜面通りに弾いてみても、全然ジャズな感じにはなりません。

片岡さんが、譜面を弾くと、ジャズな感じになりました。要するに、独特なリズムの取り方と、アクセントの付け方などがあって、そうやって弾くとジャズな感じに聞こえるのです。

で、なるほど、と思うと同時に、ピアニストの多くが、こうしたジャズを模倣して、同じような癖を身につけていくことが、不思議だなぁ、とも思います。確かに、真似したくなる気も分かるのですが、もっと違った指の癖が、色んなスタイルであってもいいのでは、と思うわけです。(片岡氏は、それを自覚的に、「なんちゃって音楽」と茶化しながら、独自のスタイルを築いておられるわけですが、、、)。

ピアノという楽器には、色んな可能性があると思うのですが、クラシックにしても、ジャズにしても、ピアニストは本当に大勢いますが、意外なほどに似た弾き方をする人が多い、とぼくは思います。

どうして、こういうことを思うようになったかと言うと、鍵盤ハーモニカを始めたからです。鍵盤ハーモニカ奏者は、ピアニスト人口に比べて、圧倒的に少ないです。ところが、みんなスタイルが個性的だったりする。それは、お手本にするべき鍵盤ハーモニカ奏者がいないから、各自が独自の道を歩んできたから、だと思うのです。

だから、ピアノにも、それくらいの可能性/多様性はあるはずだ、と考えられるようになったわけです。でも、ピアノの方がお手本になる名人が既にたくさんいる。ピアノ曲も多数作られていて、傑作もいっぱいある。だから、ピアノに先入観を持ってしまい、そこから自由になれなくなる。

ピアノに囚われながら、ピアノから自由になるためにどうしたらいいか?それは、ぼくにとっての大きなテーマです。ヒュー・ナンキヴェルと始めた「キーボード・コレオグラフィー・コレクション」は、ピアノの奏法を一度ゼロにリセットして、もう一度、ピアノの弾き方を考えてみよう、という試みです。

今まで身につけた技術を忘れることはできませんが、それでも、自分なりのピアノ音楽を切り開いていきたい、と考えています。