野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

CCCDで9時間のワークショップ

JCCAC(= Jockey Club Creative Art Centre)に行き、CCCD(Centre for Community Cultural Development)主催のワークショップで、なんと9時間ワークショップした。i-dArtの主催で香港に行くと言ったら、モックさんが期間延長してワークショップして欲しいと依頼が来て、何日延泊できるかと聞かれたが、今週末には名古屋での《たいようオルガン》の再演もあり、1日しか延泊は無理だった。そしたら、午前中に3時間、午後6時間のワークショップになった。

 

午前は、高齢者のグループで、昨年、オンラインで毎週1回(合計4回)ワークショップをして、地球温暖化の歌を作ったので、オンラインでは会っている。実際に会うのは初めて。彼女たちが2019年に作った歌を、デイヴィッドがギター伴奏で歌ってくれる。2019年はデモがあった年。その経験を経て、話したいのに話せないこと、言葉にできずに胸の中にしまっている感情を歌にした、という。広東語は分からないけど、それでも彼女たちの言葉にならない切実な言葉を感じられた。

 

「一緒で楽しい」という日本語のリズムで打楽器をやったり、それを広東語にして歌ったり楽器を楽しんだ。帰国直前に佐久間さん、イウィンさんが見学に来られて、見学だけでなく踊っていかれる。激しくトランスしそうなくらい打楽器を叩きまくったり、小さな声に耳を傾けたり。日本語を言ってみたり、即興でおしゃべりしてみたり。幸せをいっぱいいただいた。

 

午後は、ファシリテーションの講座。6時間の講座を受講したい人なんているのかな、と思うが、10人強の参加。ぼくの体験談を語りまくる導入、楽器で「せーの」、「1234」、「それは知らない」などの即興アンサンブルをやる。ぼくは、一人の強権的な支配者がコントロールする音楽ではなく、オーガニックにつながりあい互いにケアする関係で音楽をしたい、という強い意志があって、こうした即興アプローチをしている、ということを、何度も言う。

 

言葉からストーリーを作って、音楽劇のようなものを作る活動をした。ホワイトボードになぜかハムスターの絵があって、それが消えないでいる。アルコールを持ってきて、消そうとしてくれるので、それを制してハムスターについて文章を考えた。そこからグループごとにストーリーを作った。そして、そこに音楽の要素を足していった。ハムスターの話なのに、「香港人」のメンタリティーを象徴するような内容になった、とみんなが語り合った。「私は誰?」と自問するハムスター。ケージの中に閉じ込められるハムスター。問題行動をするハムスターを管理する公務員が出てきて、チェック項目をチェックしていく。香港の人たちが今抱えている現実の問題がハムスターに無意識のうちに投影されている。

 

四股も踏み、ねってい相撲聞もやり、すっぽんぽん体操で鼓のリズムをやり、タイの村祭りもやった。香港の獅子舞のリズムを教えてもらい、これを声や楽器でやってみたりもした。実際の現場のことで、色々質問もしてもらい、語り合う。みんなでゲームもやった。広東語で歌をつくる難しさについても話してもらった。

 

モックさんは、i-dArtの企画とCCCDの企画を連携できないか、と聞いてきた。千住だじゃれ音楽祭とも連携できたらいいだろうなぁ。

 

音楽を通して香港の人たちの思いに触れる濃密な1日だった。明日は帰国。