野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

knitted score初演

霧島アートの森での平川渚展にて、コンサートknitted scoreを開催した。

 

平川さんの展覧会は素晴らしかった。「編む」という個人的な行為を集めて、それらを編み変えることで、個人と個人が交わり、開かれた場になっていく、ということを、空間的にダイナミックに展開していた。編み物の背後にある物語、編んだ人、編まれた物、そこから再構築されるもの。編み物の作品にある複数の時間と空間が多層的に積み重なっている感じ。

 

鹿児島県、宮崎県、熊本県など、南九州の方々が霧島に結集しただけでなく、静岡や京都からもお客さんが来られて、賑わう客席のエネルギーも感じながらの演奏だった。

 

個人的には、編み図をどのように演奏するか解読していく作業も面白かったのだが、編み図の解読のルールが決まって以降、どのようなニュアンスで演奏するかにこだわって演奏する部分が、今回、特に印象に残る体験だった。機械的なデジタルな譜面を演奏しているのに、いろいろな感情が湧き上がってきたりして、そうしたことが演奏の微妙なニュアンスを変えていく。それは、編み図を演奏する時に限らず演奏全般に言えることだと思うのだけど、この体験を通して、演奏するということを自分なりに深く学べたような感覚を持った。

 

みなさん、ありがとう。