野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

『表現は日常にこだまする』終わらない設営の出口

明日がオープンの展覧会『表現は日常にこだまする』。午前中は、自宅で整音作業。どうしてもワークショップで子どもたちに歌ってもらった歌声は、言葉が聞き取りにくいので、EQをいじったり自分の声を足してみたりして、言葉が聞き取れるように最大限の工夫をする。

 

午後は、会場で実際に音源を鳴らしながら、チェック。スピーカーの置く位置でも印象がだいぶ変わる。空間の特性に合わせると、もっと低音が出てもいい気がするので、ベースをあげたりなど、微妙に調整。

 

美術館の広報の方が展示風景の写真をとってまわっている。美術館の里村さんは、キャプションや作家略歴などをつくり、美術館の村上さんが水平器を使って、作品の横にハレパネを貼っている。夕方になると、ぼくのコーナー以外は完成に近づいている。

 

ぼくは音をチェックしながら、展示の作業をする。1年生が画用紙に書いてくれた言葉と2年生が書いてくれた言葉があるが、スペース的に両方見せると、ごちゃごちゃする。1年生の作品《春律》は言葉の律動が伝わればいいが、2年生の作品《黄昏の詩》で「詩」なので、2年生の言葉を優先することにして、こちらは台の上に配置してみる。他にも、設営に使っている脚立を使って、畳サイズのプラダンに貼った歌詞を脚立に立てかけてみたりすると空間が面白くなる。脚立は会期中は別に使うからと、代わりにイーゼルを借りてイーゼルプラダンの寄り掛からせる。

 

その後、夕方には村上さんも退勤されて、里村さんとぼくだけで展示作業で、これは徹夜しても終わらないかもと不安になった頃に、出勤日ではない美術館の脇田さんが手伝いに来てくださる。ここから、歌詞を天井から吊るしたり、天井から吊り下がった書道の歌詞をカーブさせて壁に打ち付けたり。

 

21時の図書館閉館時間になり、22時過ぎに図書館のスタッフも帰って行く中、吹奏楽の書いてくれたタイトルなどを壁の高いところにランダムに貼ったり、不知火中学校MANDOLINという文字を、ぼくが書いて設置したり、いろいろな作業が続く。五線の楽譜も、ちょこっとずつ配置。

 

里村さんと設営していて思うのだが、もう時間がないから楽な方法にしよう、という選択をしない。時間がなくても、面白くなるなら、そっちを選ぼうとする。日曜日まで別の展覧会をしていて、月〜水の3日間で設営で、人がこれだけいなければ、もっと多くのことを諦めそうだが、諦めずに取り組む姿勢はすごい。この状況を見れば現実的に困難だから提案を引っ込めようとこちらが思っても、里村さんの方から、こうしたらもっと面白くなるのでは、と提案してくれたりする。しんどくても面白い方を選択するのだ。

 

深夜になり、CCC本社の木村さんが手伝いに来てくれる。表の看板の設置などを進める。作業していたものを片付けて後、木村さんが帰られ(おそらく0時を回っている)、その後、映像を上映するためのスペースの準備を里村さんと脇田さんとする。

 

肉体労働はここまでなので、脇田さんが帰られる。おそらく深夜1時をまわっている。その後、ぼくが書いたテキストを里村さんがデザインする作業。この間、脇田さんのアーティストとしての作品とかについて今度見せてください、とお声をかけると、その場でスマホで見せてくれる。帰るところをお引き止めすることになり、色々お話させていただく。脇田さんが帰られて後、プリントして壁に貼る作業。ぼくの略歴もということで、既にあるプロフィールを不知火美術館用にリライト(横綱の不知火のこととか、十五夜綱引に興味があることなどを追記)する。音響機材の説明などなどを済ませ、なんとか明日展覧会が無事にオープンできそうだ。3時に退館できた。いい展示ができて嬉しい。

 

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