野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

たたら節/永遠に続くperpetual bookとしての中野裕介展@不知火美術館・図書館

《あかねさす ゴング(鐘)とバカ(場歌)の ひらく音》の第1鐘で《Tatara-bushi》を歌うのは、バカがミタカッタ世界のボーカルの谷口未知さん。谷口さんから、歌詞が届く。谷口さんの世界観が見え隠れする歌詞。もっと聴きたいと直感したので、ひょっとして、たくさん作った中で時間に収まるように選んだのであったら、ボツになった歌詞も見たい、とお返事する。今回のツアーライブでは、ボツになったものを供養する儀式もあるので、何がボツになったかを知ることも重要。谷口さんの歌声で、梵鐘づくりの仕事歌が21世紀に蘇るのは、本当に楽しみ。

 

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本日で不知火美術館・図書館での中野裕介/パラモデル展が終わってしまうので、展示を再度見に行った。夏に見に行った時は、琵琶の演奏などイベント開催時だったので、人も多くいてじっくり見る感じではなかったのが、この美術館は土曜日は21時まで開館なので、人が少なくなるであろう夕食どき17時ごろを狙って行ってみた。

 

解説によれば、俊徳丸伝説や石牟礼道子の《苦海浄土》などを参照して作られた作品で、美術館だけでなく、図書館にも大きく侵食する展覧会で、展覧会上にはブルーシートを支持体とした本の見開きのように各所に配置された絵があり、そこに投影される様々な本からコラージュされた言葉があり、不知火海や都市の風景の投影があり、海の音がスピーカーから流れている。それは、展覧会を見るとか、絵を見るとか、本を読むという感覚よりは、巨大な本の中に入り込んでしまった小人になってしまったような感覚。展示にも順路があるわけでもないので、好きなように会場内を散策しながら鑑賞していると、さっき見たキャラクターがこちらにも描かれていたり、その時々で投影されている言葉が変わり、違っ言葉が目に入り、何周もしていても、そこは同じ場所ではないし、同じ絵が描かれているのに、違った物語が目に飛び込んでいく。気がつけば4時間も展示室で過ごしてしまっていたようで、そろそろ帰ろうかと思った時には、閉館10分前の8時50分だった。途中で、作者である中野さんとお話したり、企画の里村さんから撤収のスタッフを紹介されたり、美術家の宮本さんとお話したとは言え、4時間展示の中に居続けて、それでもまだ違ったものが見えてくる体験だった。perpetual book『パラモデリアーナ』というモチーフが何度も描かれていた。perpetual bookなので、日本語に訳せば「永遠につづく本」とでもなろうか。確かに、この展示は永遠に読み続けることができる本のようで、4時間経って読了したわけではなく、序章を読んだだけに過ぎない、そんな感覚に陥った。今日で終わってしまうのがもったいない展示。おつかれさまでした。