野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

アンテルーム京都/ヤノベケンジと岡本太郎/しゃべるヒトと黙るヒト

昨夜は、里村さんも京都に来ていて、アンテルーム京都に宿泊した。contact Gonzoの体験型の作品(バイクを操作して瀬戸内の島をバーチャルに1周するゲーム)などもある。

 

国立民族学博物館で行われている展覧会『Homō loquēns しゃべるヒト』を見に行く。(サブタイトルは「ことばの不思議を科学する」)。南茨木でモノレールに乗り換えようとすると、駅前にヤノベケンジさんの巨大な作品が見える。福島に設置して批判が出て撤去されたという話を聞いたことがあったが、その作品が茨木に来たのだろうか?違う作品かな?

 

bijutsutecho.com

settsu.goguynet.jp

 

南茨木ヤノベケンジに出会い、万博記念公園を降りると、岡本太郎太陽の塔に出会う。ぼくが民博で演奏したのは、2000年の野村雅一先生の企画された展覧会『からだは表現する』

 

older.minpaku.ac.jp

 

と、山下里加さんが2005年に企画した展覧会『きのうよりワクワクしてきた。』

 

older.minpaku.ac.jp

 

で、それ以来、何度かは足を運んだ気はするが、本当に久しぶり。駅前も、以前より賑やかで店もできている。太陽の塔の中は公開になっているので、太陽の塔の中の展示を観る。岡本太郎や1970年の熱に触れて、エネルギーをいただく。

 

民博での展覧会は、「言葉」というテーマに取り組むだけあって、様々な言語、発話の原理、手話、などなど、かなり情報量の多い展覧会。本を一冊読むくらいの情報量で、展示を全て見終わった頃には、ヘトヘトになっていた。

 

loquens.site

 

1階、2階を全てを見終わった後に地下での山城大督さんの展示《Spatial Tone》を見る。地下の広い空間にカーペットが敷いてあり、その中に小島のように形の違った椅子が置いてあり、スピーカー(低音用のウーファーとlistudeの無指向性スピーカー)が設置されている。外の噴水の音とスピーカーの音、空調のモーター音とスピーカーの音がさりげなくコラボしている音を聞く。山城さんの作品だから映像なのだと思い込んできたが、1階、2階で映像を見続けてきた後、映像のない広々とした空間がある。蛍光灯だけのエリアと蛍光灯なしのエリアがあるが、照明もミニマル。作品タイトルもSpatial Toneで空間と音の作品。どうして、このインスタレーションが「しゃべるヒト」の展示のための新作なのかは、よく分からなかったし、その説明もなかった。この作品は、「しゃべるヒト」を表現するために、敢えて「黙る」に取り組んだのではないか。この空間は喋りにくい空間で、ぼくも「黙るヒト」になった。椅子同士は距離が離れていて、目も合いにくい位置関係にあるので、喋りたくなる空間ではない。空間に流れる音(安野太郎の音楽と)もBGMのように会話を促進するための音楽ではなく、言葉が聞き取りにくい音や音量で流れている。外に出ると噴水の音が徐々に強く聞こえてきて、夕陽の中の太陽の塔に別れを告げ、熊本の自宅まで帰った。