昨日から不知火美術館・図書館で中野裕介展が開始した。展覧会を観に行った。施設名が不知火美術館・図書館であるが、美術館だけでの展覧会だろうと思っていたら、全然違った。図書館と美術館の間にあるカフェスペースはもちろん、その先の図書館の奥の奥まで展示が越境していた。
展示の多くは、ブルーシートのような素材の上に描かれた絵画なのだが、これが、空間に吊り下げられたりしていて、展示室の空間を微妙に仕切っている。よくよく見ると、本のような形にシートが組み合わされていて、本なので、表ページと裏ページがあるように、両面に別々の絵が描かれている。図書館に美術が越境しているが、美術館に図書館を象徴するような巨大な本が出現している。スピーカーが、結構、端っこだったり、天井だったり、辺境に配置されていて、控えめに音がする。プロジェクターがいくつもあって、色々な文字が投射されている。
こんな展示空間で肥後琵琶のライブがあった。肥後琵琶は、俊徳丸伝説についての語り物なのだが、空間が断片化されていて、様々な断片化された言葉が行き交うインスタレーションの中で琵琶の語りを聞くと、物語も解体されて、断片が耳に飛び込んでくる。空間が歪み、言葉がワープし、風景が反転する迷宮のような展覧会。
ちょうど10年ほど前に、だじゃれ音楽と野村誠に関して東京芸大で卒論を書いた丸田実季さんが偶々熊本に帰省中で、お会いした。10年前は学生だったのに、母親になっていて、今は青森県に住んでいる。懐かしい。
鹿児島県在住の美術家の平川渚さんと打ち合わせ。昨年、鹿児島でのグループ展を拝見したが、糸でインスタレーションをしていて、会期中も会場で縫い込んでいくワークインプログレスの展示だった。今年の12月から来年の2月にかけて、霧島アートの森で個展をされる。編み物の編み図を楽譜として演奏してほしい、というリクエスト。平川さんの作品も編み図も美しい。
打ち合わせしていると、美術家の宮本華子さんともお会いした。先月、兵庫県の竹野でお会いしたが、熊本県在住。九州でのネットワークが、少しずつ広がっている。
打ち合わせをしている間に、中野さんのワークショップがカフェも図書館もプラレールが増殖していき、境界線を無化していく。自由な不知火美術館・図書館。
帰宅後は、《春日の50の物語》の作曲作業をして11曲目まで来た。それぞれの曲で練習できるピアノのテクニックを副題にしてみた。
1 奴国の丘 和音のエテュード
2 須玖小学校 サンバのエテュード
3 嫁ごの尻叩き クラスターのエテュード
4 春日北小学校 分散和音のエテュード
5 日の出小学校 半音のエテュード
7 春日原小学校 指くぐりのエテュード
8 クローバープラザ 分散和音のエテュード2
9 夢 Cmaj7-Dm7のエテュード
10 警察署 8ビートのエテュード
11 若葉台 レゲエのエテュード