野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

なんだろう?

みかのはらガムランプロジェクトによる《オペラSAGAS》の上演があったが、これが、本当に不思議な公演だった。簡単に言うと、朝10時に開演で、夕方19時半に終演なので、上演時間9時間半の長編オペラのように思える。ところが、実質の上演時間は2時間で7時間半は休憩というとんでもないものだった。

 

第1幕が畳屋さんの工場で開催。「名曲とはなんだろう?」と問いかけられる歌とともに、10時に始まり、10時半に終わる。すると、楽器の撤収が行われ、会場の片付けが行われ、お昼ご飯の後に、第2幕の恭仁宮跡に楽器が運び込まれ設営が行われて、14時に、またもや「名曲とはなんだろう?」と問いかけられる歌が歌われ、第2幕が始まる。14時半に終わると、また楽器の撤収が行われ、第3幕のやぎやに搬入され、楽器が設営される。17時ごろから第3幕のリハーサルが行われ、18時から第3幕が始まる。ところが始まって、20分ほど経ったら、直会となって、お茶やお萩が振る舞われ、観客も出演者も和む。そして、その後に、野村誠作曲の《踊れ!ベートーヴェン》(1996)が上演されて、最後に、「名曲とは何だろう?」と問いかける歌が歌われて終わった。

 

《SAGAS》という公演は、どうやら「名曲とは何だろう?」と「探す」公演のようで、探しながら、何度も名曲とは何か問い続け、そして、《踊れ!ベートーヴェン》が演奏された。今日の今日まで、なぜ、この瓶原の公演で、ぼくの曲が演奏されるのか、その意味が分からなかった。だが、今日の全部を見た後に、最後に自分の曲を上演してみると、どうやらミカノハラの土地をめぐり試行錯誤をして「名曲」を探した結果、たどり着いた「名曲」の役を、ぼくの作品が担わせてもらったようだ。それは大変光栄なこと。

 

瓶原の風景、子どもたち、大人たち、どれもとても心に残った。木津川アートが開催されてきたことから派生して、みかのはらガムランプロジェクトが始まり、今、そこから派生して、行政とは全く独立した「みかのはら〜と」という市民プロジェクトも始まっている。そして、「アートって何?」と問いかけ、何かを「さがして」いる人たちがいる。そんな渦の中に、気がつくとぼくもいて、「なんだろう?」と一緒に考える1日になった。

 

《踊れ!ベートーヴェン》で打楽器独奏で加わった會田瑞樹さんのパッション溢れるソロも素晴らしかった。9月11日には、京都芸術センターで《踊れ!ベートーヴェン》を上演するが、それに向けて、大きな何かをつかむ一日になった。9月11日が楽しみ。乞うご期待。